産後うつ病と精神疾患家族歴の関連について、家族観察研究では家族歴は産後うつ病の危険因子とされるが、システマチックレビューや包括的レビュー(Umbrella Review)では一定のエビデンスが得られていない。そうした中、デンマーク・Aarhus UniversityのMatte-Marie Zacher Kjeldsen氏らは精神疾患の家族歴がある母親はない母親と比べ産後うつ病発症リスクがおよそ2倍とするシステマチックレビューとメタ解析の結果をJAMA Psychiatry(2022年8月17日オンライン版)に報告した

精神疾患家族歴による相対リスクは1.79に相当

 産後うつ病は初産女性の10〜15%に見られ、予防や治療などの介入を行う上で、発症リスクの同定が求められている。精神疾患の家族歴は同定された産後うつ病の全ての危険因子を抽出した包括的レビューでは関連性が示されていない。一方、家族観察研究においては産後うつ病における危険因子として精神疾患の家族歴が見いだされており、うつ病よりも産後うつ病の方が遺伝性は強いことが報告されている。

 そこでKjeldsen氏らはPubMed、EMBASE、PsycINFOに2022年3月までに掲載されたコホート研究および産後うつ病と精神疾患の家族歴の関連について、オッズ比(OR)またはORを算出するのに十分なデータを報告した症例対照研究を検索。最終的にコホート研究24件および症例対照研究2件の計26件・10万877例を抽出して解析した。地域別に見ると18カ国5地域(アジア8件、オーストラリア2件、欧州9件、北米5件、南米2件)であった。

 解析の結果、精神疾患の家族歴がある場合、産後うつ病のORは2.08(95%CI 1.67〜2.59)であった。一般集団における有病率を15%と仮定すると、相対リスクは1.79(同1.52〜2.09)に相当した。

 産後うつ病のOR点推定値は産後12週で高かったが(OR 2.18、95%CI 1.69〜2.81)、産後13〜26週(同1.63、1.18〜2.25)および27〜52週(同1.35、0.74〜2.49)との間に有意差はなかった。GRADEを用いて確実性を評価したところ、エビデンスの質は中程度であった。

周産期医療の一環として精神疾患家族歴の確認を

 Kjeldsen氏らは「精神疾患の家族歴に関する情報は簡単な自己報告式の質問を通じて容易に確認できるため、周産期医療の一環として実施可能と考えられる。また、妊娠前からの早期の確認により、産後うつ病の予防や症状の軽減に向けたタイムリーで的確な介入が可能になる」と結論している。

 その上で同氏は「今回の知見は、精神疾患の家族歴が精神症状発症の強力な危険因子であることを示す周産期以外での精神疾患の遺伝性に関する研究によって裏付けられている。精神疾患の家族歴がなぜ産後うつ病の危険因子であるかの検証は今回の研究の範疇にはないが、周産期以外の精神疾患において示唆されるように遺伝要因と環境要因の両方が原因である可能性が最も高い。精神的な問題を抱えた親がいる環境で育つと、母親になったときにその親から受ける社会的サポートに影響が及ぶ可能性がある。この解釈は、社会的支援の欠如が産後うつ病の危険因子であることを示唆するシステマチックレビューによって支持されている」と考察した。

編集部