急性虚血性脳卒中患者に対する初期画像評価において、CT単独とCTにMRIを加えた場合の臨床転帰に及ぼす影響を比較したデータは少ない。米・University of Texas Medical Branch at GalvestonのHeitor C. Frade氏らは、米国の急性虚血性脳卒中入院患者のデータを用いたマッチドコホート研究で、CT単独とCT+MRIの臨床転帰を比較検討。退院時および退院後1年時点の臨床転帰に関して、CT+MRIに対するCT単独の非劣性が示されたとJAMA Netw Open2022; 5: e2219416)に報告した。

十分な検証なしにMRIの追加が普及

 不要な画像検査の施行は無駄な医療行為の1つとの考えから、削減が求められている。米国では2000年以降、CTとMRIが急速に普及しており、MRIに関しては急性虚血性脳卒中患者に対する施行率が大幅に上昇し、9割以上にCTに加えMRIが施行されている。しかし、MRIの追加が脳卒中後の臨床転帰に及ぼす影響については十分に検証されていなかった。

 そこでFrade氏らは今回、急性虚血性脳卒中の入院患者の電子医療記録データを用いて、初期評価にCTのみが施行された例とCTに加えMRIが施行された例の臨床転帰を傾向スコアマッチング法により比較検討した。

 対象は、2015年1月~17年12月に神経学的評価と初期CT所見に基づき急性虚血性脳卒中と診断され、入院した18歳以上の患者。なお、MRI追加例はCT後に施行された者のみを組み入れた。

 解析対象は、組み入れ基準を満たした508例のうち、CT後にMRIが追加された123例(CT+MRI群)と傾向スコアでマッチングしたMRI非施行の123例(CT単独群)の計246例。対象の年齢中央値は68歳(四分位範囲58~79歳)、男性の割合は約53%であった。

 主要評価項目は、退院時の死亡または機能予後不良〔modified Rankin Scale(mRS)3~6〕および退院後1年以内の脳卒中または死亡とした。非劣性マージンはこれまでに報告されている虚血性脳卒中の治療に関するランダム化比較試験に準じて設定した。

退院時と1年後の両時点でCT単独の非劣性を確認

 解析の結果、退院時の死亡または機能予後不良の発生率は、CT単独群の42.3%に対してCT+MRI群では48.0%と高かった。CT単独群とCT+MRI群の間の絶対差は5.7%ポイント(95%CI-6.7~18.1%ポイント)で、事前に規定した非劣性マージン(-7.50%)を満たしたことから、CT+MRIに対するCT単独の非劣性が確認された。

 全体で11例が入院中に死亡したが、院内死亡率はCT単独群3.3%、CT+MRI群5.7%で有意差はなかった(絶対差2.4%ポイント、95%CI-2.7~7.6%ポイント、P=0.54)。

 さらに、生存退院した235例のうちその後の追跡データが収集できた225例の解析から、退院後1年以内の脳卒中または死亡の発生率はCT単独群の12.5%に対してCT+MRI群では19.5%と高く、相対リスクは1.14(95%CI 0.86~1.50)で事前に規定した非劣性マージン(0.725)を満たしていた。これにより1年後においても、CT+MRIに対するCT単独の非劣性が確認された。

 以上から、Frade氏らは「傾向スコアマッチング法を用いた急性虚血性脳卒中入院患者のコホート研究では、退院時および1年後時点における臨床転帰に関して、CTへのMRI追加に対するCT単独による画像診断の非劣性が示された」と結論。「急性虚血性脳卒中の入院患者に対するMRI追加の妥当性を証明するには、さらなる研究が必要だ」と述べている。

(岬りり子)