新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後遺症(Long COVID)として報告される症状は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染していない一般人口でもよく見られるものが多く、一部はCOVID-19発症前から存在していた可能性もある。オランダ・University of GroningenのAranka V. Ballering氏らは、同国の約8万例を対象に23の身体症状について1年4カ月の間に24回評価し、従来の研究では考慮されなかったCOVID-19発症前やSARS-CoV-2非感染者の症状を補正したLong COVIDの有病率を検討。その結果、成人COVID-19患者の8人に1人(12.7%)がLong COVIDを経験していたとLancet2022; 400: 452-461)に発表した。

味覚・嗅覚障害などの10症状をLong COVID中核症状と定義

 解析対象は、オランダ北部在住の成人を対象に行われたLifelines COVID-19コホート研究に参加し、2020年3月31日~21年8月2日にCOVID-19関連の23症状に関するデジタル質問票に計24回回答した7万6,422例(平均年齢53.7歳、女性60.8%)。うち5.5%に相当する4,231例(同52.4歳、65.7%)がCOVID-19と診断され、COVID-19患者群と年齢、性、アンケート回答時期(COVID-19診断時)をマッチングしたSARS-CoV-2陰性の対照群(8,462例)を1:2で選出した。

 各症状の重症度(過去7日間の症状による苦痛の程度)を1(全くない)~5(極めて重度の苦痛)の5段階のスコアで評価し、COVID-19診断前後およびCOVID-19患者群と対照群で比較した。

 その結果、COVID-19患者群において診断後90~150日の時点で診断前および対照群と比べて重症度スコアが有意(P<0.001)に高かった症状は、胸痛、呼吸困難、呼吸時の疼痛、筋肉痛、味覚・嗅覚障害、四肢の刺痛感、咽喉頭異常感、熱感と冷感の交互出現、腕や脚のだるさ(重い感じ)、全身倦怠感だった。これら10種類の症状を、Ballering氏らは「Long COVIDの中核症状」と定義した。

COVID-19患者の12.7%でSARS-CoV-2感染に起因の中核症状

 COVID-19診断後90~150日時点で中等症(スコア3)以上の症状が少なくとも1つあった割合は、COVID-19患者群で40.7%、対照群で29.3%だった。また、同時点でスコアが1ポイント以上上昇して中等症以上に悪化した症状が少なくとも1つあった割合は、それぞれ29.6%、18.1%だった。

 中核症状に限定して解析したところ、COVID-19診断後90~150日時点で中等症以上に悪化した症状が少なくとも1つあった割合は、COVID-19患者群で21.4%、対照群で8.7%だった(χ2=181.1、df=1、P<0.0001)。この結果を踏まえ、Ballering氏らは「COVID-19患者の12.7%において、診断後3カ月の時点で持続していた中核症状の原因はSARS-CoV-2感染であると考えられた」と結論。「今後の研究で、Long COVIDを引き起こす原因やメカニズムを解明する必要がある。SARS-CoV-2ワクチン接種および変異株の影響についても検討すべき」と付言している。

頭痛めまい胸痛、腰痛、悪心、筋肉痛、呼吸困難、熱感と冷感の交互出現、四肢の刺痛感、咽喉頭異常感、全身倦怠感、腕や脚のだるさ(重い感じ)、呼吸時の疼痛、鼻水、咽頭痛、乾性咳嗽、湿性咳嗽、発熱下痢、腹痛、味覚・嗅覚障害、くしゃみ、眼の痒み

(太田敦子)