米・University of MinnesotaのCarolyn T. Bramante氏らは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染した過体重/肥満の外来患者1,323例を対象に、3種類の既存薬(血糖降下薬メトホルミン、抗寄生虫薬イベルメクチン、抗うつ薬フルボキサミン)による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化予防効果を第Ⅲ相二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験で検討。その結果、いずれの薬剤とも低酸素血症、救急診療部(ED)受診、入院または死亡の複合イベントの予防効果は認められなかったとN Engl J Med(2022; 387: 599-610)に発表した。ただし事前に設定した副次解析では、メトホルミンでED受診、入院または死亡を減らす可能性が示された。
2×3ファクトリアルデザイインの6群で検討
解析対象は、COVID-19の確定診断後3日以内かつ症状の発現後7日以内に登録した入院していない過体重/肥満の成人患者1,323例(年齢中央値46歳、女性56%、BMI中央値30、SARS-CoV-2ワクチン接種率52%)。対象を2×3ファクトリアルデザインを用いて、①メトホルミンとフルボキサミン、②メトホルミンとイベルメクチン、③メトホルミンとプラセボ、④プラセボとフルボキサミン、⑤プラセボとイベルメクチン、⑥プラセボとプラセボーを投与する6群にランダムに割り付けた。メトホルミンは速放剤を14日間(6日間で1,500mg/日まで増量)、イベルメクチンは390~470μg/kg/日を3日間、フルボキサミンは50mg 1日2回を14日間、それぞれ投与した。
主要評価項目は、投与開始後14日時点におけるCOVID-19重症化〔低酸素血症(在宅でのパルスオキシメーターによる酸素飽和度が93%以下)、ED受診、入院または死亡の複合〕とした。全体での主要評価項目の発生率は25.5%だった。
主要評価項目に3剤で有意差なし
主要評価項目の予防効果を、メトホルミン群(①②③群)と対照群(④⑤⑥群)、イベルメクチン群(②⑤群)と対照群(③⑥群)、フルボキサミン群(①④群)と対照群(③⑥群)でそれぞれ比較した。
その結果、ワクチン接種と他の治療薬の使用を調整後の主要評価項目のオッズ比(aOR)は、メトホルミンで0.84(95%CI 0.66~1.09、P=0.19)、イベルメクチンで1.05(同0.76~1.45、P=0.78)、フルボキサミンで0.94(同0.66~1.36、P=0.75)と、いずれも有意差が示されなかった。
一方、事前に設定した副次解析では、メトホルミンのみが主要評価項目を構成するより重篤な転帰を減らす可能性が示された。
ED受診、入院または死亡のaORはメトホルミンで0.58(95%CI 0.35~0.94)、イベルメクチンで1.39(同0.72~2.69)、フルボキサミンで1.17(同0.57~2.40)だった。同様に、入院または死亡のaORはそれぞれ0.47(95%CI 0.20~1.11)、0.73(同0.19~2.77)、1.11(同0.33~3.76)だった。
安全性の評価では、いずれの薬剤とも重篤な治療関連有害事象は認められなかった。
以上の知見を踏まえ、Bramante氏らは「入院していない過体重/肥満の成人COVID-19患者において、メトホルミン、イベルメクチン、フルボキサミンによるCOVID-19重症化予防効果は認められなかった。ただし、メトホルミンは入院または死亡を減らす可能性が示された」と結論。「メトホルミンによるCOVID-19重症化予防のメカニズムとしては、抗炎症作用および抗ウイルス作用、急性期の高血糖予防考えられる。COVID-19の治療において、これらのメカニズムが臨床的に意味のある作用を発揮するかどうかを、さらに詳しく検討する必要がある」と付言している。
(太田敦子)