米・Vanderbilt University Medical CenterのHilary A. Tindle氏らは、危険な飲酒および毎日喫煙の習慣を持つロシアのHIV感染者400例を対象に、ニコチン受容体部分作動薬のバレニクリンとcytisineの有効性を口腔スプレータイプのニコチン代替療法(NRT)薬と比較する二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験を実施。その結果、全ての治療薬群で3カ月後の大量飲酒日数が減少し6カ月後の禁煙率が高く、飲酒と喫煙の改善効果に3剤間で有意差はなかったとJAMA Netw Open2022; 5: e2225129)に発表した。同氏らは「喫煙と危険な飲酒行動は併存することが知られているが、それらの治療を受けている人は少ない。禁煙補助薬が喫煙だけでなく飲酒習慣も同時に改善する知見は有益である」と期待を示している。

大量飲酒日数が月2日前後に減少

 対象は、ロシア・サンクトペテルブルクで登録した過去30日間の大量飲酒日数(米国立アルコール乱用・依存症研究所の定義に基づく)が5日以上かつ1日の平均喫煙本数が5本以上で、飲酒・喫煙量を減らす意志がある18~70歳のHIV感染者400例(平均年齢39歳、男性65.8%、平均CD4陽性T細胞数391個/mm3、平均喫煙本数21本、平均大量飲酒日数9.3日)。

 84.5%にC型肝炎ウイルス感染の既往歴があり、48.8%に重度のアルコール使用障害、39.1%に抑うつ症状、13.6%に中等度の不安障害、24.3%に30日間のオピオイドの使用が報告された。

 対象を実薬とプラセボ各1種類を投与する4群に1:1:1:1でランダムに割り付け、12カ月間追跡した。第1群はバレニクリン12週間とNRT偽薬8週間、第2群はバレニクリン偽薬12週間とNRT薬8週間、第3群はsytisine25日間とNRT偽薬8週間、第4群はsytisine偽薬25日間とNRT薬8週間をそれぞれ投与した。

 解析の結果、主要評価項目とした治療開始後3カ月時点における過去30日間の平均大量飲酒日数のベースラインからの変化は、第1群で9.5日(標準偏差6.1日)→2.0日(同3.8日)、第2群で9.3日(同5.7日)→2.1日(同4.3日)、第3群で8.9日(同5.0日)→1.5日(同3.3日)、第4群で9.6日(同6.3日)→2.4日(同5.2日)と、全ての群で減少した。

 主要評価項目を3剤間で比較すると、バレニクリンとNRT薬〔第1群 vs. 第2群の発生率比(IRR)0.94、95%CI 0.49~1.79、P=0.85〕、sytisineとNRT薬(第3群 vs. 第4群のIRR 0.60、95%CI 0.30~1.18、P=0.42)、バレニクリンとsytisine(第1群 vs. 第3群のIRR 1.29、95%CI 0.65~2.55、P=0.85)のいずれでも有意差がなかった。

喫煙継続者より禁煙者で高い禁酒効果

 副次評価項目とした6カ月後の禁煙率は、第1群が15.0%、第2群が17.2%、第3群が19.0%、第4群が18.8%だった。3剤間の比較では、バレニクリンとNRT〔第1群 vs. 第2群のオッズ比(OR)0.89、95%CI 0.38~2.08〕、sytisineとNRT(第3群 vs. 第4群のOR 1.00、95%CI 0.46~2.17)、バレニクリンとsytisine(第1群 vs. 第3群のOR 0.79、95%CI 0.35~1.78)のいずれでも有意差がなかった(全てP>0.99)。

 さらに事後解析において、禁煙達成者では喫煙継続者と比べて平均大量飲酒日数が少なく(3カ月後:0.7日 vs. 2.3日、6カ月後:1.2日 vs. 1.9日、12カ月後:1.8日 vs. 3.4日)、30日間の禁酒達成率が高かった(それぞれ35.3% vs. 17.1%、54.3% vs. 29.4%、46.8% vs. 31.5%)。

 Tindle氏らは「喫煙と不健康な飲酒の習慣を併せ持つ人は多く、これらの習慣はHIV感染者のエイズ以外の疾患リスクを高める」と指摘し、「今回、禁煙補助薬の種類にかかわらず両方の習慣が同時に改善できるという有益な知見が得られた」と結論。「今後の研究で、禁煙補助薬による飲酒習慣の同時改善が禁煙者に特有の効果かどうかを検討すべき」と付言している。

(太田敦子)