国立成育医療研究センター感染症科医長の庄司健介氏と国立国際医療研究センターAMR臨床リファレンスセンター主任研究員の秋山尚之氏らの共同研究グループは8月12日、オミクロン株流行期では国内初となる小児新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する大規模研究の結果を発表した。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンを2回接種していた患者は全例軽症で、逆に集中治療室(ICU)に入室するなどより重症の例ではいずれも2回の接種歴がなかったことから、「ワクチン接種が重症化から守る方向に働いている可能性がある」としている。

2~12歳では発熱、痙攣、13歳以上では咽頭痛が多い

 同研究は、COVID-19 Registry Japanに登録されているSARS-CoV-2のデルタ株とオミクロン株の流行期における18歳未満の小児患者847例を対象に臨床的特徴などを比較検討したもの。COVID-19 Registry Japanは国立国際医療研究センターが運営している国内最大のCOVID-19レジストリであり、同レジストリの登録データを用いて、デルタ株流行期(2021年8~12月)の小児患者458例、オミクロン株流行期(2022年1~3月)の小児患者389例を対象に解析した。

 年齢別に見た小児COVID-19患者数は、①3カ月未満:デルタ株流行期20例、オミクロン株流行期27例、②3カ月~24カ月:同74例、86例、③2~6歳未満:同88例、67例、④6~13歳未満:同142例、116例、⑤13歳以上:同134例、93例ーだった。

 解析の結果、38℃以上の発熱が生じた割合は、2~6歳未満ではデルタ株流行期の20.5%に対しオミクロン株流行期では43.3%、6~13歳未満ではそれぞれ19.0%、37.1%とオミクロン株流行期で2倍以上だった。痙攣ではさらに顕著な差が見られ、2~6歳未満ではデルタ株流行期の2.3%に対しオミクロン株流行期で13.4%、6~13歳未満ではそれぞれ2.1%、7.8%だった。

 一方、嗅覚障害発症例は、6~13歳未満でデルタ株流行期の6.3%に対しオミクロン株では0.9%、13歳以上ではそれぞれ13.4%、2.2%とオミクロン株流行期には6分の1程度少なかった。13歳以上では咽頭痛を来す患者が多く、デルタ株流行期には38.1%、オミクロン株流行期には60.2%だった。

デルタ株期に比べ低年齢化

 SARS-CoV-2ワクチンの接種歴が入力されていた790例のうち、酸素投与、ICU入室、人工呼吸管理のいずれかを要した重症と考えられる患者43例のワクチン接種歴を調べたところ、2回接種例はいなかった。なお、接種を2回終えていた患者は、874例中50例(5.9%)でいずれも軽症だった。

 患者の年齢中央値は、デルタ株流行期の8.0歳に対しオミクロン株流行期では6.0歳と低年齢化していることが把握できた。感染経路についても、学校などの教育関連施設において感染したと考えられる例が、デルタ株流行期の10.0%に対し、オミクロン株流行期では17.2%と多かった。入院期間はデルタ株流行期の7.0日に対しオミクロン株流行期では5.0日と短縮しており、両流行期とも死亡例はなかった。

 これらの結果から、研究グループは「日本の小児COVID-19入院患者の実態がオミクロン株流行期にどのように変化したかが明らかになった。デルタ株流行期に比べ、発熱や痙攣が増えていたことは、小児COVID-19の診断を考える上で重要な情報」と指摘。さらに「小児へのSARS-CoV-2ワクチン接種者自体が少ない時期に実施したため限界はある」としながらも、「小児へのワクチン接種がCOVID-19の重症化から守る方向に働いている可能性が示唆された」と結論している。

(小沼紀子)