新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の判定には主に、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査や抗原定量検査、抗原定性検査が用いられる。一方、詳細な診断や予後の鑑別にはCT検査が用いられており、精度の高い評価手法が求められていた。藤田医科大学放射線医学教室臨床教授の大野良治氏は8月19日、キヤノンメディカルシステムズと共同で、CTの肺野画像を用いた解析ソフトウェア「COVID-19肺炎解析ソフトウェア」を開発したと発表した。
機械学習により開発したアルゴリズムを活用
現在COVID-19のスクリーニングとしてのCT検査は推奨されていないものの、胸部単純X線撮影で異常影が見られ他疾患との鑑別を要する場合や、臨床症状や地域の感染状況などからCOVID-19が強く疑われるものの、PCR検査で確定できない場合などでは、感染拡散のリスクや医療業務への影響を考慮した上で、CT検査が用いられている。ただし、COVID-19肺炎には非特異的な所見もあることから、見落としを防ぐため人工知能(AI)による自動解析の開発が望まれていた。
COVID-19肺炎解析ソフトウェアは、画像を診断する際にAI技術の1つである機械学習により開発したアルゴリズムを活用して、COVID-19肺炎に見られるCT画像所見を有する可能性を提示するという。解析は同社の汎用画像診断ワークステーション用プログラムRapideyeCore SVAS-01と組み合わせて行う。
具体的には①COVID-19肺炎像判定において、その可能性を「高」または「低」で表示する、②COVID-19肺炎像判定機能が注目した肺野内の領域を明瞭に表示する―(図)。ただし、①はCOVID-19、罹患の有無、重症度を判定するものではないという。
図.COVID-19肺炎解析ソフトウェア画像例
(藤田医科大学プレスリリースより)
感度は88.5%、COVID-19診断見落としの防止に有用
大野氏は臨床試験において、PCR検査結果を対照にソフトウェアの精度を検証したところ、感度が88.5%(95%Cl 79.9~94.3%)と高い精度を示した。
同氏は「ソフトウェアの使用により、COVID-19肺炎像の見落とし防止が期待できる」と展望している。
なお、同製品はキヤノンメディカルシステムズが今年(2022年)6月2日に製造販売承認を取得しており、9月1日から販売開始する。
(植松玲奈)