一時は減少傾向にあった新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)新規感染者数は、今年(2022年)7月初旬に始まった流行第7波で過去最多を更新し、収束が見えない状況が続いている。国立感染症研究所感染症疫学センターの新城雄士氏らは、検出株の75%以上がオミクロン株のBA.5系統であったと推定される今年7月4~31日に実施した症例対照研究の暫定結果を報告。SARS-CoV-2ワクチン2回目接種後の発症予防効果は5カ月経過後に35%程度まで低下していたが、3回目接種後2週間~3カ月には65%に上昇していた。同氏らは研究を継続しており、引き続き全国の医療機関に協力を要請している(関連記事「感染研が新型コロナワクチン評価の協力要請」、「オミ株にワクチンは有効か、国内速報」)。
関東地方の7施設、1,547人が対象
調査対象は、今年7月4~31日に関東地方の医療機関7施設の発熱外来などを受診した16歳以上の患者(一部の医療機関では16~19歳も対象としている)。検査前に基本属性、SARS-CoV-2ワクチン接種歴などを含む問診票に記載を求め、PCR検査の結果により陽性者を症例群、陰性者を対照群と分類した。
解析対象は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)発症から14日以内に37.5℃以上の発熱、全身倦怠感、寒気、関節痛、頭痛、鼻汁、咳嗽、咽頭痛、呼吸困難感、嘔気・下痢・腹痛、嗅覚味覚障害の症状のうち、いずれか1つがある者とした。
ワクチン接種歴は、①未接種、②1回目接種または2回目接種後13日以内、③2回目接種後14~90日、④2回目接種後91~150日、⑤2回目接種後151日以降、⑥3回目接種後13日以内、⑦3回目接種後14~90日、⑧3回目接種後91日以降―に分類した。解析に際しワクチンの種類は区別しなかった。
ロジスティック回帰モデルを用いてオッズ比(OR)を算出した。世代、性、基礎疾患の有無、医療機関、暦週、濃厚接触歴の有無、過去1カ月のSARS-CoV-2検査の有無、3カ月以上前のCOVID-19診断歴の他、今回は職業、種々のバイアスを考慮するためのマスク着用状況、飲酒を伴う夕方・夜の会食への参加も調整因子に組み込んだ。ワクチン有効率は(1-調整OR)×100で推定した。
1,624人を登録し、うち発症日不明または発症から15日以降に受診した者51人および4回目接種後の26人を除く1,547人を解析に組み入れた。年齢中央値は36歳(範囲16〜93歳)、男性は51.9%で、24.9%がなんらかの基礎疾患を有していた。症例群は989人(63.9%)、対照群は558人(36.1%)だった。ワクチン接種歴は(欠損の7人を除く)、未接種者が197人(12.8%)、1回接種者が8人(0.5%)、2回接種者が471人(30.6%)、3回接種者が864人(56.1%)であった。
3回目接種で有効率上昇も、変異株への対応は課題
ワクチン接種歴別に見たSARS-CoV-2感染リスクは表の通り。調整ORに基づくワクチン有効率は、2回目接種後151日以降で35% (95%CI -4.0~60%)、3回目接種後14~90日で65% (同42~79%)に上昇し、3回目接種後3カ月以降で54% (同28~71%)と推定された(図)。
表. ワクチン接種歴別に見た感染リスク
図. オミクロン株流行期におけるSARS-CoV-2ワクチンの有効率
〔表、図とも新型コロナワクチンの有効性を検討した症例対照研究の暫定報告(第四報)〕
新城氏らは「BA.5流行期において、ワクチン2回目接種後5カ月後には発症予防効果が低程度であったが、3回目接種後に中~高程度まで上昇する可能性が示唆された」と結論。度重なる免疫逃避能を有する変異株の出現や経時的な免疫減衰の可能性があるとして「オミクロン株を含めた変異株に対応するワクチンの早期開発と導入が待たれる」と付言した。
(編集部)