胃がん高リスク患者において、単回の内視鏡検査では早期がんがしばしば見落とされる。約4,500例を登録した国内ランダム化比較試験(RCT)ECG Detectionでは、第二世代狭帯域光(2G-NBI)と白色光(WLI)で、非拡大観察における早期胃がん検出率は同等だった(Gut 2021; 70: 67-75)。同試験では、早期胃がんが発見された患者に対し約1年後にサーベイランス内視鏡検査を実施。1年後の新規胃がん検出率は、当初の検出率と同等で、高リスク患者では1年間隔でのサーベイランスが必要である可能性が示唆された。詳細は、兵庫県立がんセンター消化器内科部長の山本佳宣氏らがJAMA Netw Open(2022; 5: e2227667)に報告した。
集中検査1年後の新規がん検出率と危険因子を検討
山本氏らは、2014年10月~17年9月に胃がん高リスク患者4,523例を非盲検RCTに登録。2種類のモダリティ(2G-NBIとWLI)で連続して非拡大観察を行う集中内視鏡検査(以下、インデックス内視鏡)において、モダリティの順序を変えた2群に1:1でランダムに割り付け、早期胃がん検出における2G-NBIの有用性をWLIと比較した。
対象の平均年齢±標準偏差(SD)は70.6±7.5歳で男性が78.0%、全例が日本人だった。インデックス内視鏡で早期胃がんが検出されたのは133例(3.0%)で、うち最初のモダリティで発見されたのは97例(72.9%)だった。モダリティ別の1回目での検出率は2G-NBIが2.3%(53例)、WLIが1.9%(44例)で差はなかった(P=0.412)。一方、2回目のモダリティでの検出は36例(27.1%)で、単回の検査では見逃しが多いことが示唆された。
インデックス内視鏡の9~15カ月後にサーベイランス内視鏡を実施し、サーベイランスで新たに胃がんが検出された患者(症例群)と、症例群と背景をマッチングさせた新規がんが検出されなかった同数の対照群を比較した。
この事前に予定されていた二次解析における主要評価項目は、インデックス内視鏡から15カ月以内の新規胃がん検出率とし、主要副次評価項目は、同期間内の新規胃がんに関連する危険因子の同定とした。
新規検出率2.6%、開放型萎縮性胃炎などが危険因子
4,146例(92.7%)にサーベイランス内視鏡を実施した結果、新規胃がんの検出率は2.6%(107例)でインデックス内視鏡との差はなかった。
インデックス内視鏡で早期胃がんが検出された133例中110例(82.7%)が15カ月以内にサーベイランス内視鏡を受け、そのうち新規胃がんが検出されたのは12例(10.9%)だった。
多変量解析により、症例群107例(平均年齢±SD 71.7±7.2歳、男性87.9%、胃腫瘍の既往76.6%)と対照群107例(同71.8±7.0歳、87.9%、81.3%)を比較した結果、新規胃がん検出の独立した危険因子として開放型萎縮性胃炎の存在〔オッズ比(OR)6.00、95%CI 2.25~16.01、P<0.001〕およびインデックス内視鏡による早期胃がん検出(同4.67、1.08~20.21、P=0.04)が同定された。
山本氏らは「胃がん高リスク患者では、2つのモダリティを用いたインデックス内視鏡を施行しても、約1年後のサーベイランス内視鏡での新規胃がん検出率は低下しなかった。これらの患者群では早期胃がん発見から1年間隔でのサーベイランスが必要である」と結論している。
(小路浩史)