治療薬の有効性と安全性を比較してエビデンスに基づく治療を選択するにはランダム化比較試験(RCT)が必須だが、希少疾患は患者数に乏しくRCTの実施が困難である。国立がん研究センター中央病院肝胆膵内科医長の森實千種氏らは、希少がんの1つである神経内分泌がん(NEC)の第Ⅲ相RCTを世界で初めて実施。NECの一次治療において、エトポシド+シスプラチン(EP療法)とイリノテカン+シスプラチン(IP療法)の全生存(OS)は同等で、いずれも標準治療として確立された。

JCOGの臓器別3グループが合同で研究計画を立案

 NECは神経内分泌細胞に由来する神経内分泌腫瘍の1つで、膵臓や消化管、肺など全身のさまざまな部位から発生する。増殖速度が速いため切除が可能なケースは少なく、多くの場合は病状制御を目的とした化学療法が行われる。

 治療は性質が比較的類似している小細胞肺がんの化学療法に準じ、EP療法またはIP療法が国内外で広く用いられてきた。しかし、いずれがより有効かは不明であり、エビデンスに基づき治療を選択するためにRCTの実施が求められていたが、希少がんであることから困難だった。

 日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)は、NECがさまざまな臓器に発生する特性に注目。肝胆膵グループ、胃がんグループ、食道がんグループが合同で研究計画を立案し、世界で初めてのNECのRCTである非盲検の第Ⅲ相試験TOPIC-NEC(JCOG1213)が実施された。

中央病理診断でNECを判定

 対象は、組織学的に診断された消化管または肝胆膵由来の再発または切除不能な未治療NEC患者。年齢は20〜75歳で、全身状態(PS)は0〜1が適格とされた。2014年8月8日〜20年3月6日に国内50施設で179例が登録され、一次治療としてEP療法を行うEP群(84例)またはIP療法を行うIP群(86例)に1:1でランダムに割り付けられた。

 希少がんであるNECは正確な病理診断が困難で、診断では細胞増殖の指標、細胞形態、他のタイプの腫瘍の併存などの評価を行う必要があるため病理診断が極めて重要となる。同試験では消化器腫瘍を専門とする病理医による中央病理診断が行われた。

 EP群ではエトポシド100mg/m2(1、2、3日目)とシスプラチン80mg/m2を(1日目)を3週ごと、IP群ではイリノテカン60mg/m2(1、8、15日目)とシスプラチン60mg/m2(1日目)を4週ごとに投与した。主要評価項目はOS、副次評価項目は奏効率、無増悪生存(PFS)、有害事象などだった。

OS中央値はEP群12.5カ月、IP群10.9カ月

 対象の平均年齢は64歳(範囲29〜75歳)で男性が68.8%だった。主要評価項目のOS中央値はEP群の12.5カ月(95%CI 10.3〜15.7カ月)に対してIP群では10.9カ月(同8.9〜13.1カ月)で両群に差はなかった〔ハザード比(HR)1.04、90%CI 0.79〜1.37、P=0.80、〕。1年OSはそれぞれ52.1%(95%CI 40.1〜62.8%)、41.8%(同30.8〜52.3%)だった。

図. OS(主要評価項目)

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JAMA Oncol 2022年8月18日オンライン版)

 PFS中央値は、EP群の5.6カ月(95%CI 4.1〜6.9カ月)に対してIP群では5.1(同3.3〜5.7カ月)とやはり有意差はなかった(HR 1.06、95%CI 0.78〜1.45)。奏効率はそれぞれ54.5%、52.5%だった。

 主なグレード3以上の有害事象は好中球減少症(91.5%、53.7%)、白血球減少症(61.0%、30.5%)、発熱性好中球減少症(26.8%、12.2%)だった。EP群で発熱性好中球減少症の頻度が高かったことから顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)製剤の予防投与を推奨するようプロトコルを改訂した結果、EP療法群で予防的投与を行った場合の発現率は5.1%に抑制された。

 なお、168例中16例(9.5%)で中央病理診断が参加施設と一致しなかった。この点について、国立研究開発法人国立がん研究センターなどのプレスリリースでは「神経内分泌がんの病理診断の難しさを示すとともに、病理中央診断の実施により、本試験において適正な評価を行うことにつながったと考えられる」と評価している。試験の詳細はJAMA Oncol2022年8月18日オンライン版)に報告されている。

(安部重範)