今年(2022年)6月20日に「がん化学療法後に憎悪した消化管間質腫瘍(GIST)」を適応症として製造販売承認を取得していたヒートショックプロテイン(HSP)90阻害薬ピミテスピブが8月18日に薬価収載され、8月30日に発売された。同薬の承認に際しては市販後全例調査が義務付けられている。これを踏まえ、日本癌治療学会は8月にGIST診療ガイドライン速報として「CHAPTER-GIST-301試験の概要ならびにイマチニブ、スニチニブおよびレゴラフェニブに不応または不耐の転移性/切除不能GISTに対するピミテスピブ使用に関する提言」を発表。ピミテスピブ承認の根拠となる臨床試験や薬剤の概要について報告した。なお同提言の内容については、『GIST診療ガイドライン第4版』にも記載予定であるという(関連記事「大鵬、HSP阻害薬ピミテスピブの適正使用を要請」)。

死亡または増悪のリスクが49%低下

 GISTは消化管壁の粘膜下に発生する悪性腫瘍で、粘膜から発生する胃がん大腸がんとは性質が異なる。胃や小腸に最も多く見られることが知られている。今回のピミテスピブの承認は、第Ⅲ相二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験CHAPTER-GIST-301の結果に基づく(Ann Oncol 2022年6月8日オンライン版)。同試験の対象は2018年10月31日~22年4月30日に登録されたイマチニブ、スニチニブ、レゴラフェニブに不応または不耐の転移性・切除不能GIST患者86例。ピミテスピブ群とプラセボ群に2:1でランダムに割り付けられた。なお同試験では、盲検化中央画像判定(BCRR)により進行(PD)と判定された場合は盲検を解除し、プラセボ群からピミテスピブ群へのクロスオーバーを認めた。

 試験の結果、盲検投与期間中の無増悪生存(PFS)中央値は、プラセボ群の1.4カ月(95%CI 0.9~1.8カ月)に対し、ピミテスピブ群では2.8カ月(同1.6~2.9カ月)と有意に延長し、死亡または増悪のリスクが49%低下した〔ハザード比(HR)0.51、95%CI 0.30~0.87、片側P=0.006、層別Log-rank検定)。

 全生存(OS)中央値においても、プラセボ群の9.6カ月(95%CI 5.5カ月~未到達)に対し、ピミテスピブ群では13.8カ月(同9.2カ月~未到達)と延長傾向を認めた(HR 0.63、95%CI 0.32~1.21、片側P=0.081)。またクロスオーバーによるOSへのバイアスを補正するためのRPSFTモデルを用いた解析では、OS中央値はピミテスピブ群13.8カ月(95%CI 9.2カ月~未到達)、プラセボ群7.6カ月(同5.3~14.9カ月)で、HRは0.42であった(同0.21~0.85、片側P=0.007)。

ピミテスピブを四次治療薬として推奨

 これらの試験結果を踏まえ、GIST診療ガイドライン改訂ワーキンググループは、ピミテスピブについて「HSP90によるクライアント蛋白の高次構造の形成を阻害することにより、腫瘍の増殖に関与する蛋白の発現量減少、アポトーシスの誘導などを介して腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられ、KITや血小板由来成長因子(PDGFR)αを直接阻害する既存の薬剤とは全く異なる機序で抗腫瘍効果が期待できる」と評価した上で、「CHAPTER-GIST-301試験においてPFSおよび補正されたOSを有意に延長したことから、転移性/切除不能GISTの四次治療薬としてピミテスピブを推奨する」と記載した。ただし、重篤ではないがHSP90阻害薬に特徴的な夜盲(13.8%)を含む眼障害が報告されているため、眼科との連携を考慮すべきであると付言している。

(編集部)