希望しながら保育サービスを受けられない人がゼロとなるよう、政府は待機児童の減少が続く中でも、受け皿整備に引き続き力を入れる方針だ。一方、定員割れとなる保育所も各地で生じており、このままでは運営に支障を来しかねない。そこで政府は2023年度から、空き定員を使い、どの施設にも通っていない未就園児を預かるモデル事業に着手。地域の子育て支援拠点として保育所の活用を目指す。
 今年4月時点の待機児童は2944人で過去最少となり、5年前の約9分の1へ急減した。ただ、厚生年金の対象者を段階的に拡大する制度改正により、女性の就業がより促され、保育ニーズが高まる可能性がある。厚生労働省の担当者は「今後も受け皿確保を進める」と強調。24年度までにさらに約11万人分の拡大を目指す。
 その一方で、定員割れとなる保育所への対策強化も課題だ。保育所の運営費は、児童数に応じて補助金が交付される仕組みであり、利用者を確保できないとそれだけ運営が厳しくなる。
 そこで、政府が検討しているのは、親が就労していないなどの理由で保育サービスを受けられない子育て世帯を対象に、保育所の空き定員を活用する取り組みだ。子どもを保育所にたまに預けることができれば、地域での親子の孤立や虐待に至るリスクを減らせるとの狙いもある。小倉将信少子化担当相は30日の記者会見で「家庭で育てていて精神的な困難に直面している保護者も多数いる」として、新事業の意義を強調する。
 保育事業などに取り組む認定NPO法人「フローレンス」の駒崎弘樹代表理事も、虐待報告件数が増加する中、全ての家庭に保育所の門戸を開くべきだと指摘。「保育所に余力ができておりチャンスだと思っていい」と話している。 (C)時事通信社