未成年における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)急性期後の後遺症(post-acute sequelae of SARS-CoV-2 Infection;PASC)に関する報告は少ない。米・University of Colorado School of Medicine / Children's Hospital ColoradoのSuchitra Rao氏らは、電子カルテから21歳未満で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)検査を受けた約65万例のデータを抽出し、PASCの疾病負担(罹患率)と臨床的特徴について後ろ向きに検討、結果をJAMA Pediatr2022年8月22日オンライン版)に報告した。味覚・嗅覚の異常や胸痛など成人例と共通する特徴が多く観察された一方で、肝酵素値異常や脱毛、発疹などは未成年例でより頻度が高かった。

症候、全身病態、投薬別に検討

 米国立衛生研究所(NIH)や世界保健機関(WHO)によるPASCの定義は主に成人データに基づいており、小児のPASCについての理解は小児多系統炎症性症候群(MIS-C)に関するものを除き、あまり得られていない。

 Rao氏らは、米国の小児病院9施設の電子カルテから2020年3月~21年10月に登録された21歳未満の178万2,537例を特定し、そのうちSARS-CoV-2の抗体検査またはPCR検査を受けた81万7,505例のデータを抽出。さらに、解析対象を検査前3年間に理由を問わず医療機関を1回以上受診した65万9,286例に限定した。男児は52.8%、平均年齢は8.1±5.7歳であった。

 PASCの特徴を、初回検査後28~179時点における症候(発熱、咳、疲労、息切れ胸痛、動悸、胸部圧迫感、頭痛、嗅覚・味覚の異常など)および全身病態(MIS-C、心筋炎糖尿病、他の自己免疫疾患など)の121項目と、COVID-19関連の投薬30項目の計151項目に分類。施設、年齢、性、検査様態(外来・救急・入院など)、人種・民族、登録時期を調整したCox比例ハザードモデルで検査陰性群に対する陽性群の調整ハザード比(aHR)を求め、未成年におけるPASCの疾病負担を推算した。

嗅覚・味覚の異常、心筋炎、鎮咳薬・感冒薬処方が高頻度

 SARS-CoV-2検査陽性は5万9,893例(9.1%)だった。MIS-Cの診断は1,260例で、そのうち陽性は155例だった。

 陰性群と比べて陽性群で多かったのは、症候では嗅覚・味覚の異常(aHR 1.96、95%CI 1.16~3.32)、嗅覚喪失 (同1.85、1.20~2.86)、脱毛(同1.58、 1.24~2.01)、胸痛(同1.52、1.38~1.68)、肝酵素値異常(同1.50、1.27~1.77)だった。一方、全身病態では心筋炎(同3.10、1.94~4.96)、急性呼吸窮迫症候群(同2.96、1.54~5.67)、筋炎(同2.59、1.37~4.89)が多かった。

 COVID-19関連の治療薬で最も多く処方されていたのは鎮咳薬・感冒薬(aHR 1.52、95%CI 1.18~1.96)で、他には鼻粘膜充血除去薬の全身投与、ステロイドと消毒薬の併用、オピオイド、充血除去薬だった。

負担は小さいが成人と異なる特徴が明らかに

 PASCに関連する全身病態、症候、COVID-19関連の投薬のうち1つ以上の発生率は、陽性群が41.9%(95%CI 41.4~42.4%)、陰性群が38.2%(同 38.1~38.4)で、群間差は3.7%ポイント(同3.2~4.2%ポイント)、調整後の標準化罹患率比は1.15(同1.14~1.17)だった。

 MIS-C以外でPASCと強く関連していた因子は、5歳未満、急性期の集中治療室(ICU)治療、複雑な慢性疾患の合併だった。

 今回の検討から、未成年のPASCに関して成人と共通する特徴が観察された一方で、肝酵素値異常や脱毛、発疹、下痢など、未成年例でより多く認められた症状もあった。Rao氏らは、SARS-CoV-2検査の受検者を解析対象とし、陰性例を対照群に設定したことが研究の強みとした上で、「COVID-19後遺症クリニックの受診者や入院患者を対象とした既報に比べ、われわれの研究における未成年PASC の疾病負担は小さかった」とまとめた。

(小路浩史)