評価における自由記載は、定量的評価の重要な補助手段だが、暗黙のバイアスを表している可能性がある。米・University of California, San FranciscoのLekshmi Santhosh氏らは、生涯教育(CME)の講義に対する評価について、教員の性別によって評価が異なるかどうかを検討。女性教員に対する評価コメントに「重要(important)」「知識が豊富(knowledgeable)」との形容詞が、男性教員については「楽しめる(enjoyed)」「力強い(dynamic)」という形容詞がより多く含まれるなど微妙に異なっていたとの結果をJAMA Netw Open(2022年8月22日オンライン版)のResearch Letterで発表した。

男女別に教員を定量・定性で評価

 これまで、医学部の診療参加型臨床実習の評価では、性や人種により大きな違いがあること(J Gen Intern Med 2019; 34: 684-691)、研修生による教員評価では性差で違いはないものの、女性教員の態度に焦点を当てたコメントが多い傾向があること(Ann Am Thorac Soc 2020; 17: 621-626)が報告されている。

 今回、Santhosh氏らは、CME受講者の性別によって、教員への評価が異なるかどうかを検討した。

 同氏らは、2015~19年に同校が開いた内科とサブスペシャルティの全国CME講義の評価を分析するため、同大学の公式サイトで講師の性別情報(男性・女性)を抽出した。評価法として、講演の概要、実践的応用力、プレゼンテーションに対する定量的評価(スコア範囲:1~5点、5点が最も好ましい)および自由記述による定性評価を行った。

女性教員は概要および実践的応用力のスコアが有意に高い

 講義は2,149件で、3万8,026件の評価(男性教員56.7%、女性教員43.3%)を分析した。男性教員と比べ女性教員は、概要(3.95 vs. 3.96、P=0.02)および実践的応用力(3.96 vs. 3.98、P=0.04)で有意に高いスコアを獲得し、プレゼンテーションは男女で有意差がなかった。

 女性教員に対する定性評価の60%にアドバイスするコメントが含まれており、男性教員では55%だった。定性評価で用いられていた形容詞は男女で近似していたが、女性教員に対しては「重要(important)」「知識が豊富(knowledgeable)」「詰め込み(packed)」「必要不可欠(essential)」「情報(information)」がより多く含まれていた。一方、男性教員では「楽しみ(entertainment)」「関心のある(interested)」「楽しい(fun)」「楽しめる(enjoyed)」「力強い(dynamic)」という形容詞がより多く含まれていた。こうした形容詞の微妙な違いはジェンダーバイアスを反映している可能性が考えられた。

 以上の結果を踏まえ、Santhosh氏らは「評価において暗黙の偏見に対する認識が高まり、こうした研究が増えるにつれて評価者が意識的に性別にとらわれない言葉遣いをするようになった可能性がある」と述べている。

 既報によると、有能と認識された女性講師は好感度が低くなることがあるという(Harvard Business Review 2013年4月30日)。そのため、同氏らは「女性教員は、能力と好感度のバランスを図る上で、プレゼンテーションスタイルを変更し、力強いことよりも知識が豊富というスタンスを取る可能性がある」と考察している。

(田上玲子)