デジタル庁は1日、発足から1年を迎えた。新型コロナウイルス禍で浮き彫りとなったデジタル化の遅れを挽回する役割が期待されたものの、まだ十分な成果を挙げたとは言いがたい。突破力が持ち味の河野太郎デジタル相の下、国民が利便性を実感できるような変革が求められている。
 「大きなビジョンを描きつつ、行うべき活動を進めてきた」。事務方トップの浅沼尚デジタル監は1日の記者会見でこの1年間を振り返った。河川やトンネルの目視点検などアナログ規制の一括見直し方針を決め、新型コロナウイルスワクチンの接種証明アプリも開発した。
 ただ、ダウンロード数が840万を超えた接種アプリのような目に見える成果は乏しい。「デジタル庁が何をやっているのか分かりにくい」との声は多く、浅沼氏も「分かりやすくデジタルの恩恵を示すことが求められている」と認める。
 デジタル化加速の鍵を握るのはマイナンバーカード。スマートフォンへのカード機能搭載や、利用機会の拡大を急ぐ。カード保有者が利用できる「マイナポータル」の使い勝手の改善も急ぐ。
 600人体制で発足した当初、人手不足で組織が混乱していると訴える声が庁内から上がった。現在は750人に増員されたが、約140ものプロジェクトをこなすのに十分とは言えない。河野氏は「優先順位を付ける」と、プロジェクトを選別して成果を急ぐ考えを示している。 (C)時事通信社