湿疹の一種であるアトピー性皮膚炎(AD)は皮膚バリア機能障害を引き起こし、経皮的免疫グロブリン(Ig)E感作を亢進することが指摘されている。湿疹は出現時期や持続経過によって4つの表現型に区分できるが、IgE感作パターンとの関連性については十分解明されていない。そこで、国立成育医療研究センター・アレルギーセンターセンター長の大矢幸弘氏らは、同センターが実施している成育コホート研究のデータを解析。日本の13歳児におけるアレルギー症状の実態および湿疹の表現型とIgE感作パターンの関連性を検討した結果、13歳時点で81.8%がなんらかのIgE抗体に陽性を示したとAllergol Int(2022年6月30日オンライン版)に報告した。(関連記事「9歳時のアレルギー陽性率は約75%」)
鼻炎が68.8%、喘息が5.8%
成育コホート研究では、2003年~05年に最初の出生前診察を受けた妊婦1,701人と2004~06年に誕生した児1,550人を登録。今回の解析対象は、児のうち出産後も追跡調査を行い、13歳時点で血液検査およびアンケートに参加した468人(女児50.0%)だった。
全体における13歳時点でのアレルギー症状を分析したところ、過去1年間に認められたアレルギー症状は鼻炎が68.8%、喘息が5.8%だった。なんらかのIgE抗体に陽性を示したのは81.8%だった(図)。
図. 13歳時点におけるIgE抗体反応とアレルギー症状
(国立成育医療センタープレスリリースより)
持続型湿疹は喘鳴、鼻炎、花粉症、口腔アレルギーの併存リスク高い
次に、対象を湿疹の有無で乳児期から持続する「持続型」、乳児期に改善する「早期寛解型」、乳児期以降に発現する「遅発型」、「無発現」の4つの表現型に分け、割合を見たところ、持続型が6.8%、早期寛解型が23.7%、遅発型が5.1%、無発現が64.3%だった。
性、母親のAD既往、受動喫煙、ペット飼育などの交絡因子を調整したロジスティック回帰分析で、湿疹の表現型とIgE感作の関連性について検討した。その結果、持続型は全例がIgEに感作しており、無発現との比較では喘鳴〔調整後オッズ比(aOR)5.61、95%Cl 1.89~16.60〕、鼻炎(同20.30、2.70~153.00)、花粉症(同3.02、1.25~7.27)、バラ科果物(リンゴ・モモ)による口腔アレルギー症状(同5.05、1.43~17.80)の併存との関連が認められた。早期寛解型は喘鳴以外のIgE感作との関連が示された。一方、遅発型と関連していたのは鼻炎症状のみだった(同3.05、1.02~9.14)。
湿疹無発現でも6割超がスギ感作
大矢氏らは、湿疹の表現型と空気中のアレルゲン感作との関連性についても解析。その結果、持続型はスギ感作が90.6%で認められ、無発現との比較ではスギ(aOR 5.84、95%Cl 1.71~19.90)、ヒノキ(同4.20、1.64~10.70)、牧草(同2.89、1.16~7.16)、イヌ(同13.40、2.57~69.60)、ネコ(同2.71、1.25~5.87)、ハウスダスト(同8.82、3.20~24.30)など15種類の空中浮遊アレルゲンとの関連が示された。早期寛解型は7種類と関連していたが、遅発型と空中浮遊型アレルゲンとの関連は認められなかった。ただし、無発現でもスギ感作は63.5%に、ヒノキ感作は51.2%に認められた。
さらに、湿疹の表現型と食物アレルゲン成分の感作の関連性を調べたところ、持続型は無発現との比較でエビ(ブラックタイガー)(aOR5.78、95%Cl 1.62~20.50)、クルミ(同17.90、2.05~157.00)、キウイフルーツ(同8.71、1.49~50.90)の感作と関連が示された。一方、早期寛解型、遅発型との関連が認められた食物アレルゲンはなかった。
解析結果を踏まえ、同氏らは「日本の13歳児の多くが鼻炎やIgE抗体陽性を有していたことから、アレルギー疾患患者の増加が懸念される」と結論。
さらに「湿疹(AD)の持続型では、他のアレルゲン感作の併存リスクが高いことが示された。一方、遅発型は多くのアレルギー症状を伴わないことから、持続型とは機序が異なることも予想される。今後は個々の症状に合わせた適切な介入が推奨される」と提言している。
(植松玲奈)