日本小児科学会は8月26日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行下における国内外のワクチンで予防可能な疾患(VPD)に対するワクチンの接種の状況を踏まえ、可能な限り定期的な予防接種の継続が重要であると公式サイトで呼びかけた。同学会による予防接種継続に関する啓発は2020年に続き2回目であり、今回は国境を越えた人流の増加への対策として定期接種の維持が重要としている。(関連記事新型コロナの自粛でワクチン接種に遅れ」)

日本では予防接種継続の啓発により接種率が回復

 国内でCOVID-19の流行が始まった2020年春から、1歳児および3歳以降に接種されるワクチン(4種混合ワクチン、麻疹風疹混合ワクチン、日本脳炎ワクチン、2種混合ワクチン)の接種率の低下を受け、日本小児科学会など関連学術団体、地方自治体、厚生労働省などがCOVID-19流行下でも予防接種を継続することの重要性を啓発した結果、接種率は速やかに回復した。

 麻疹を例に挙げると、COVID-19流行前の2018年度の接種率は98.5%と47都道府県全てにおいて排除状態の維持に要する95%以上の接種率が維持されていた。しかしCOVID-19流行初期を含む2019年度は95.4%に低下、19道府県で95%未満に陥った。2020年度は再び98.5%に上昇し95%未満は1県のみとなった。国内における麻疹報告数は2019年の744例に対し、2020年、2021年はそれぞれ13例、6例と排除状態を維持している。

接種率低下によるVPDアウトブレークが発生している国も

 海外でもCOVID-19流行を理由に、2020年5月時点で57カ国105種のVPDに対するワクチン接種キャンペーンが延期され、約8億回のワクチンが延期または接種機会を失ったと推定されている。こうした状況は徐々に改善されつつあるが、麻疹含有ワクチン接種率が低下しているナイジェリア、インド、ソマリア、エチオピア、パキスタンなどで麻疹のアウトブレークが発生している。さらに、COVID-19流行との因果関係は不明だが、マラウイおよびモザンビークで2021年11月と2022年3月に野生型ポリオウイルスによるポリオ患者が報告された。両国とも長らくポリオ患者の発生はなかったが、ポリオワクチン接種率が70%と低いことから発生に至った可能性がある。

小児への予防接種の安定的継続が重要

 こうした国内外の状況を踏まえ、日本小児科学会は「COVID-19流行以降激減していた国境を越えた人流の再増加が始まっており、海外でアウトブレークしているVPDが持ち込まれる可能性は容易に予想される」と警鐘を鳴らした。前述の麻疹やポリオだけでなく、成人男性への第5期定期接種率が低迷している風疹、2014年に定期接種化された水痘、任意接種のままであるおたふくかぜ(流行性耳下腺炎、ムンプス)などはCOVID-19流行後に定点当たりの報告数も減少していたため、結果として免疫を持たない人が潜在している可能性がある。同学会は「COVID-19流行時においても小児への予防接種を安定して継続することが重要だ」と呼びかけている。

編集部