糖尿病性末梢神経障害性疼痛(DPNP)には対症療法の第一選択薬としてほとんどの国際ガイドラインでアミトリプチリン、デュロキセチン、プレガバリン、ガバペンチンが推奨されているが、どの薬剤を最初に使用し、効果不十分な場合に何を追加すべきかをhead to headで比較したエビデンスはない。英・Sheffield Teaching Hospitals NHS Foundation TrustのSolomon Tesfaye氏らは、DPNP患者にとって臨床的に最も有益で忍容性の高い治療法を決定するため、第一選択薬のうち、アミトリプチリン、デュロキセチン、プレガバリンの各単剤療法とその併用療法による鎮痛効果を直接比較する多施設ランダム化二重盲検クロスオーバー試験OPTION-DMを施行。その結果、鎮痛効果はいずれの単剤療法、併用療法でも同等であったと、Lancet(2022; 400: 680-690)に発表した。
クロスオーバー試験で単剤、併用療法を直接比較
OPTION-DMは、英国の13施設において2017年11月14日~19年7月29日に登録され、疼痛評価に用いたNumerical Rating Scale(NRS:0「疼痛なし」、1〜3「軽度の疼痛」、4〜6「中等度の疼痛」、7〜10「重度の疼痛」)の1日平均スコアが4以上で選択基準に適合したDPNP患者140例を対象とした。NRSスコアは試験終了まで毎日記録した。
試験デザインは、一次治療薬を6週間投与し、6週目のフォローアップ来院時に直近7日間の平均NRSスコア3以下を達成した患者を「有効」として単剤療法を継続し、NRSスコア4以上は「無効」として二次治療薬を追加し併用療法を10週間継続、計16週間を1つの治療サイクルとした。なお、副作用のために一次治療薬を中止した場合は二次治療薬に切り替えた。
薬剤の組み合わせは、①一次治療薬のアミトリプチリンに二次治療薬のプレガバリンを追加したAP、②プレガバリンにアミトリプチリンを追加したPA、③デュロキセチンにプレガバリンを追加したDP-の3パターン。AP→DP→PA、AP→PA→DP、DP→AP→PA、DP→PA→AP、PA→AP→DP、PA→DP→APの6コースを設定し、140例を各コースの人数が均等になるようランダムに割り付けた。用量は、1日最大耐用量(アミトリプチリン75mg、デュロキセチン120mg、プレガバリン600mg)またはNRSスコア3以下のいずれかに到達するまで増量した。
主要評価項目は、各併用パターンにおけるベースライン時と16週目の直近7日間の平均NRSスコアの差とした。
単剤療法6週間+併用療法10週間後には痛みスコアが半減
140例中130例が1番目の治療サイクルへ進んだ。完了した97例が2番目の治療サイクルへ、さらに完了した84例が3番目の治療サイクルへと進んだ。
全ての併用パターンにおいて、平均NRSスコア±標準偏差(SD)はベースライン時の6.6±1.5から16週目には3.3±1.8へ低下し、併用パターンによる有意差はなかった。
平均差は、DP対APで−0.1(98.3%CI −0.5〜0.3)、PA対APで−0.1(同−0.5〜0.3)、PA対DPでは0.0(同−0.4〜0.4)で、いずれも有意差はなかった。
併用療法を受けた患者では、平均NRSスコア±SDのベースラインからの低下幅は1.0±1.3と、単剤療法を続けた患者の0.2±1.5よりも大きかった。
いずれの薬剤もQOLや抑うつ、睡眠を改善
SF-36により健康関連QOL、HADSにより不安や抑うつ傾向、不眠重症度指数により睡眠などを評価したところ、全ての単剤療法でベースラインからのQOL、不安および抑うつ傾向、睡眠の改善が示された。
単剤療法の有害事象は、対処可能なものが多かった。PAではめまい、DPでは吐き気、APでは口渇の有意な増加が認められた。重篤な有害事象の発生に治療パターンによる有意差はなかった。また、最大耐用量の併用療法は単剤療法に比べ有害事象がほとんどなく忍容性が良好だった。
今後の治療ガイドラインに影響も
以上より、Tesfaye氏らは「鎮痛効果は単剤療法、3パターンの併用療法の全てで同等だった。併用療法は忍容性が高く、必要に応じて行うことで痛みの大幅な軽減が得られる。単剤療法で疼痛管理が不十分な患者の疼痛緩和に有用だ」と結論。
さらに、「われわれが知る限り、本研究は神経因性疼痛においてこれまでで最大かつ最長の直接比較、複数期間のクロスオーバー試験である。実臨床では大半の患者が単剤療法から開始し、数カ月以内に2剤目を追加する必要があるため、実用的な試験と言える。DPNPだけでなく、一般的な慢性神経障害性疼痛の治療ガイドラインにも応用できるかもしれない」と述べている。
(宇佐美陽子)