定期的な身体活動と新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症(COVID-19)予後との関連については複数の報告があるが、系統的な解析は行われていなかった。スペイン・Universitat de ValènciaのYasmin Ezzatvar氏らは、成人約185万例のデータのシステマチックレビューとメタ解析を行い、身体活動量とSARS-CoV-2感染、COVID-19重症化、COVID-19による入院および死亡との関連を定量化。中等度強度で150分/週の身体活動により、COVID-19の重症化・死亡リスクが最小化することをBr J Sports Med(2022年8月22日オンライン版)に報告した。
逆分散ランダム効果モデルによりプール解析
定期的な身体活動が健康上の便益をもたらす背景として、糖尿病や肥満、高血圧、呼吸器疾患といった疾患の予防や重症化の抑制、免疫力の向上、ストレス軽減などが挙げられている。これらはいずれも、SARS-CoV-2感染およびCOVID-19重症化の危険因子の軽減につながるものであり、両者の関連を検討した研究は増えつつある。
Ezzatvar氏らは、2022年3月までにPubMed、Web of Science、SportDiscusのデータベースに収載された文献のキーワード検索を行い、重複の除外などを経て絞り込んだ291件について、組み入れ基準(査読文献で、18歳以上の成人において定期的な身体活動とCOVID-19の予後のうち1項目以上との関連を検討した症例対照研究、横断研究、または前向き/後ろ向きコホート研究)に合致した16件(185万3,610例)を同定し、システマチックレビューとメタ解析を行った。リスク評価の指標はオッズ比、相対リスク(RR)比、ハザード比とし、逆分散ランダム効果モデルを用いてプール解析を行った。
対象の平均年齢は53.2歳、女性は53%だった。全体の陽性症例数は13万4,639例、入院2万984例、重症化例7,009例、死亡2,878例だった。
500MET・分/週までの身体活動が最も有益
解析の結果、不活発な群と比べて定期的に身体活動を行っていた群では感染リスク(RR 0.89、95%CI 0.84~0.95、P=0.014、I2=0%)、入院リスク(同0.64、0.54~0.76、P<0.001、I2=48.01%)、重症化リスク(RR=0.66、95%CI 0.58~0.77、P<0.001、I2=50.93%)、COVID-19関連死リスク(RR=0.57、95%CI 0.46~0.71、P=0.001、I2=26.63%)がいずれも低かった。
1週間当たりの代謝当量(MET)・分で示した身体活動量とCOVID-19重症化およびCOVID-19関連死との間には非線形の用量反応関係が認められた(P<0.001、図)。ただし、用量反応曲線は約500MET・分/週で頭打ちとなった。500MET・分/週の身体活動は、中等強度で150分/週、高強度で75分/週の身体活動量に相当する。
図. 身体活動量とCOVID-19重症化およびCOVID-19関連死との関連
(Br J Sports Med 2022年8月22日オンライン版)
Ezzatvar氏らは「定期的な身体活動は、COVID-19の有害な予後のリスク軽減に関連しており、COVID-19重症化リスクを軽減する公衆衛生政策としても有用かもしれない」と結論している。ただし、「検討対象とした研究間の異質性や出版バイアスの可能性を考慮し、標準化された方法と評価項目を用いて、さらなる研究を行う必要がある」と付言している。
(小路浩史)