新型コロナウイルス感染拡大に伴う入国制限が7日に緩和されるのを受け、運輸や旅行、小売りなどの関連業界が需要回復に期待を強めている。制限緩和ではワクチン接種を条件に陰性証明を不要とするほか、1日当たりの入国者数の上限を約2万人から5万人に拡大。添乗員の同行がないパッケージツアーも認める。関連業界は訪日客数や消費額の増加につなげたい考えだ。
 JR東日本の深沢祐二社長は6日の記者会見で、訪日観光客が増えれば「各地を旅行していただいて私たちの業績にも反映される」と歓迎。羽田空港と都心を結ぶ空港線を運行する京浜急行電鉄は「訪日観光受け入れの機運が高まる」(広報)と話し、空港線の本数拡大など体制を強化する構えだ。旅行大手関係者は「ツアーの準備には1カ月程度かかる」と対応を急ぐ考えを示す。
 これまでは添乗員の同行が義務付けられていたため自由に行動しづらく、訪日客の買い物需要が盛り上がらない一因とされた。家電量販店を運営するヤマダホールディングスは制限緩和を機に、「駅前の店舗で訪日客向けのコーナー設置やイベントを検討する」と攻勢を強める。一方、百貨店大手関係者はコロナ前に「爆買い」をもたらした中国人観光客の回復は鈍いと分析し、「(感染抑制を徹底する)『ゼロコロナ』政策が終わらないと大きな期待はできない」と指摘した。
 入国制限のさらなる緩和を求める声も根強い。航空業界関係者は「ビザ取得のプロセスが残り、個人旅行にはまだ制約がある」と語り、仕組みを改めなければ近隣諸国などに観光客を奪われかねないと危機感を示す。全国の旅行会社でつくる日本旅行業協会の高橋広行会長(JTB会長)も「入国者数の上限撤廃やビザの免除で訪日旅行が促進されることを期待する」と訴える。 (C)時事通信社