進行胃・食道がんに対し、米食品医薬品局(FDA)はPD-L1の発現を問わず免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の使用を承認したものの、賛否両論がある。個々の臨床試験では、PD-L1非発現または低発現の患者におけるICIの便益は示されていないが、こうした探索的解析には本質的な限界がある。米・Mayo ClinicのHarry H. Yoon氏らは、腫瘍組織のPD-L1発現状態によるICIの効果の予測能を他の因子と比較するシステマチックレビューとメタ解析を実施。PD-L1の発現状態がICIの便益の強力な予測因子であることをJAMA Oncol(2022年8月25日オンライン版)に報告した。
第Ⅲ相試験・1万1,166例のデータを組み入れ
組み入れ基準は、成人の進行胃・食道がんにおいて抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体を含む治療と標準治療を比較した第Ⅲ相ランダム化比較試験(RCT)で、MEDLINE、EMBASE、Scopus、Web of Science、Cochrane Central Registerに2000~22年に収載されたもの。5,781件の抄録を抽出し、26件で本文レビューを行い、基準に合致した17件・1万1,166例(扁平上皮がん5,067例、腺がん6,099例、男性77.6%、65歳未満59.5%)をシステマチックレビューとメタ解析に組み入れた。17件のうち9件が一次治療、8件が二次治療以降だった。
14の予測因子をそれぞれ2つのレベルに分け、扁平上皮がんで8因子※1、腺がんで13因子※2を比較した。主要評価項目は全生存とし、標準治療に対するICIの平均ハザード比(HR)をランダム効果モデルにより算出し、各因子の2レベルにおける平均HRの比により的中率を定量化した。
扁平上皮がんではTPS、腺がんではMSIとCPSが強力なOS予測因子
解析の結果、扁平上皮がんでは、PD-L1 TPS※3がICIによる便益の最も強い予測因子だった。HRは低TPS群(1,799例)の0.84(95%CI 0.75~0.95)に対し高TPS群(1,489例)では0.60(同0.53~0.68)で、高TPS(カットポイント≧1)の的中率は41.0%であり、感受性解析でも一貫して予測能が高かった。次いで予測能が高かった因子はPD-L1 CPS※4で、高CPSの全体的な的中率は34.3%だったが、TPSほど一貫した結果は得られなかった。他の因子の的中率は、いずれも16.0%以下だった。
腺がんでは、高マイクロサテライト不安定性(MSI-high)がICIによる便益の最も強い予測因子で、全体的な的中率は135.8%だった。ただし、胃・食道がんではMSI-high症例は少ないため、有用性は限定的と考えられる。
MSIの次に強力な予測因子はPD-L1 CPSで、HRは低CPS群(1,543例)の0.95(同0.84~1.07)に対し高CPS群(2,352例)では0.73(95%CI 0.66~0.81)だった。高CPS(カットポイント≧10)による的中率は29.4%であった。MSIとCPS以外の因子の的中率はいずれも12.9%以下だった。
Yoon氏らは「進行胃・食道がん患者において、腫瘍組織におけるPD-L1発現はICIを含む治療の効果を高精度に予測できた。PD-L1非発現または低発現の患者ではICIの便益は低く、ICI治療患者の選択において腫瘍組織におけるPD-L1発現を考慮すべきである」と結論している。
(小路浩史)