英・Newcastle Hospitals NHS Foundation Trust/Newcastle UniversityのMichela Guglieri氏らは、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の男児121例を対象に、新たな治療薬として開発中のステロイド性抗炎症薬vamoroloneの有効性と安全性をプラセボおよび標準治療薬のプレドニゾンと比較する二重盲検ランダム化比較試験(RCT)を実施。その結果、プレドニゾンに比べ、投与開始後24週時点で運動機能が有意に改善し、ステロイドの長期投与に伴う副作用の1つである発育の成長阻害が軽減されたとJAMA Neurol(2022年8月29日オンライン版)に発表した。
起立速度、歩行距離・速度、昇段速度が改善
同試験では、11カ国の33施設においてステロイド治療歴がない4歳以上7歳未満のDMD男児133例(平均年齢5.4歳)を登録。うち121例をプラセボ(30例)、プレドニゾン0.75mg/kg/日(31例)、vamorolone 2mg/kg/日(30例)、同薬6mg/kg/日(30例)を投与する4群に1:1:1:1でランダムに割り付けて24週間治療した。
有効性の主要評価項目は、プラセボ群と比較したvamorolone 6mg群における仰臥位からの立ち上がり(TTSTAND)速度の24週時点におけるベースラインからの平均変化量とした。
解析の結果、TTSTAND速度の変化量(最小二乗平均)はプラセボ群で-0.01rise/秒〔標準誤差(SE)0.01〕と低下したのに対し、vamorolone 6mg群では0.05rise/秒(同0.01)とプラセボ群に比べて有意な改善が認められた(最小二乗平均差0.06rise/秒、95%CI 0.02~0.10rise/秒、P=0.002)。
副次評価項目のベースライン→24週の変化量〔最小二乗平均(SE)〕に関しても、①vamorolone 2mg群におけるTTSTAND速度〔vamorolone群0.03rise/秒(0.01) vs. プラセボ群-0.01rise/秒(0.01)、最小二乗平均差0.05rise/秒、95%CI 0.01~0.08rise/秒、P=0.02〕、②vamorolone 6mg群における6分間歩行距離(6MWD)〔同28.3m(9.6) vs. -13.3m(10.0)、41.6m、14.2~68.9m、P=0.003〕、③vamorolone 2mg群における6MWD〔同23.9m(9.7) vs. -13.3m(10.0)、37.1m、9.6~64.7m、P=0.009〕、④vamorolone 6mg群における10m走行/歩行(TTRW)速度〔同0.26m/秒(0.05) vs. 0.01m/秒(0.06)、0.24m/秒、0.09~0.39m/秒、P=0.002〕の第1~4位の評価項目において、vamorolone群でプラセボ群と比べて有意な改善が認められた。
さらに、探索的評価項目とした歩行能力の評価尺度North Star Ambulatory Assessmentの合計スコア、階段4段を昇る速度の2項目に関しても、vamorolone群でプラセボ群と比べて有意な改善が認められた。
成長阻害と骨形成マーカー低下は認めず
安全性の評価では、1つ以上の治療関連有害事象を発現した患者の割合は4群で同等だった(プラセボ群79.3%、プレドニゾン群83.9%、vamorolone 2mg群83.3%、同薬6mg群89.3%)。
身長パーセンタイル値のベースラインからの変化は、プレドニゾン群で-1.88パーセンタイル(標準偏差8.81)と低下したのに対し、vamorolone群では6mg群で3.86パーセンタイル(同6.16、P=0.02)、2mg群で0.26パーセンタイル(同9.22、P>0.05)と低下せず、発育の成長遅延は認められなかった。
骨形成マーカーのオステオカルシンおよびⅠ型プロコラーゲン-N-プロペプチド(P1NP)、骨吸収マーカーのI型コラーゲン架橋C-テロペプチド(CTX1)といった骨代謝マーカーは、プレドニゾン群で大幅に低下したがvamorolone 6mg群では低下せず、骨代謝状態を反映する骨代謝マーカーに対する安全性が示された。
一方、今回の試験対象となったDMD男児は、ベースライン時の標準用量コルチコトロピン(ACTH)刺激試験でコルチゾール値が低く、副腎機能不全を呈する割合が高かった。プレドニゾン群、vamorolone 2mg群および6mg群の3群で、投与開始後12週および24週時点の早朝コルチゾール値、24週時点のACTH刺激試験のコルチゾール値が大幅に低下した。
以上の結果から、Guglieri氏らは「DMD男児に対する24週間の治療において、vamoroloneは有効かつ安全であることが示された。ステロイド長期投与が標準治療となっているDMDに対し、vamoroloneはプレドニゾンより安全で、代替薬になる可能性がある」と結論。「ベースラインでの副腎機能不全の割合が予想外に高かった点については、今後検討する必要がある」と付言している。
(太田敦子)