関節鏡による半月板部分切除術は最も一般的な膝手術だが、手術により正常機能に近い回復が得られる割合は明らかでなかった。スウェーデン・Centralsjukhuset KristianstadのSofie Alerskans氏らは、半月板部分切除術または縫合術後の患者の主観的膝機能データを用いて、年齢層別に正常集団と比較。半月板損傷患者は、年齢や実施した半月板手術の種類にかかわらず、正常集団と同等な主観的回復に達することはなかったとBMJ Open Sport Exerc Med(2022;8:e001278)で報告した。
KOOSスコアを手術患者と正常集団データで比較
過去のランダム化比較試験(RCT)やそのメタ解析で、半月板部分切除術の便益はあまり大きくないことが示されているが、それらのRCTは半月板損傷患者と正常集団を比較したものではなかった。半月板損傷の原因は、若年層では外傷、中年層では変性が多く、Alerskans氏らは、外傷による半月板損傷が多い若年層では、中年層と比べて正常集団に匹敵する主観的な機能回復の割合が高いのではないかとの仮説の下、今回の研究を実施した。
2010~14年にスウェーデン・Skåne University Hospitalで半月板部分切除術または半月板縫合術を受けた1,434例(年齢18~54歳)に、膝OA転帰スコア(KOOS)質問票を用いた研究への参加を呼びかけ、421例から回答を得た。対照群には、過去に同地域でKOOS質問票を用いて実施された住民研究から膝機能が正常な集団のデータを抽出した。
手術群と対照群を、それぞれ、若年層(18~34歳)と中年層(35~54歳)に分け、さらに手術の種類〔半月板手術単独または半月板縫合術および膝前十字靭帯再建術(ACLR)の併用〕により分類。KOOSの5つのサブスケール〔疼痛、症状、日常生活動作(ADL)、スポーツ/レクリエーション活動、QOL〕により膝の症状や機能を手術群と正常集団で比較した。
術前の現実的な期待値設定が重要
手術群421例の平均追跡期間±標準偏差(SD)は4.2±1.4年(範囲3.7~5.0年)だった。若年層と中年層のBMIは同等で、全体の62例で、膝不安定性、十字靱帯/側副靱帯の歪み/断裂に対する非手術治療歴があった。検討した半月板手術のいずれでも、若年層と中年層の間で予後に有意差は認められなかった。
若年手術群のKOOSサブスケールスコアは、ACLR併用の有無を問わず、全体的に正常集団と比べ有意に低かった(P<0.001)。ただし、半月板縫合術を受けた患者におけるADLのみ、正常群に匹敵する回復が得られた。
中年手術群のKOOSサブスケールスコアは、半月板部分切除術単独の集団ではKOOSサブスケールスコアが全体的に正常集団と比べ有意に低かった(P≦0.009)が、半月板縫合術単独の集団で正常集団と比べ有意に低かったのは、スポーツ/レクリエーション活動およびQOLサブスケールのみだった(P<0.001)。
手術の種類別に見ると、若年層と中年層のいずれでも、半月板縫合術とACLRの組み合わせで、他の全ての組み合わせと比べKOOSスコアの改善度が高かった。
Alerskans氏らは「半月板損傷患者では、年齢や実施した半月板手術の種類にかかわらず、正常集団と同等なKOOSスコアに達することはなかった。ただし、半月板縫合術にACLRを組み合わせた患者では、半月板手術単独よりも主観的膝機能転帰が良好だった」と結論し、「手術前に膝が完全には回復しないことを患者に伝え、術前に現実的な期待値を設定することが重要である」と注意を呼びかけている。
(小路浩史)