英・Imperial College LondonのSara C. Buttery氏らは、肺気腫に対する肺容量減少術(LVRS)と気管支鏡下肺容量減少術(BVLR)の有効性および安全性を直接比較する初の多施設ランダム化比較試験(RCT)CELEBを実施。その結果、両術で肺機能、呼吸困難、運動能力の改善は同等だったと欧州呼吸器学会(ERS 2022、9月4~6日)で報告した。

治療1年後の効果を比較

 肺気腫に対するLVRSは、胸腔鏡下で肺気腫病変部を切除する低侵襲の術式だが、BVLRは気管支鏡下で気管支内弁を留置し肺胞を閉塞させて肺容量を減少させるより低侵襲の術式である。両術はともに肺気腫患者の肺機能、呼吸困難、運動能力、QOLを改善することが示されているが、両者を直接比較したRCTはなかった。そこでButtery氏らは、肺気腫に対する治療12カ月後の効果はBVLRに比べLVRSで高いとの仮説を立て、初のRCTで検証した。

 CELEB試験では2016年10月から肺気腫患者88例(平均年齢64.6歳、女性48%)を登録、LVRS群(41例)とBVLR群(47例)にランダムに割り付け、1年間追跡した。

 主要評価項目は、ベースライン時から1年後のiBODEスコアの変化とした。BODEはBMI、airflow Obstruction(気道閉塞度)、Dyspnea(呼吸困難)、Exercise capacity(運動能力)の略で、気道閉塞は1秒量(FEV1)、呼吸困難はMedical Research Council Dyspnoeaスコア、運動能力はincremental shuttle walk test(iSWT)を指標とし4指標の合計点で示される(範囲0~10点、点数が高いほど死亡リスクが高い)。

 検討の結果、1年後のiBODEスコアの変化量はLVRS群(-1.10点)とBVLR群(-0.82点)で同等だった(P=0.54)。各指標の変化量も両群で同等だった。

 残気量(%予測値)の変化を見ると、LVRS群(-36.1%)とBVLR群(-30.5%)で同等の改善が認められた(P=0.91)。

安全性も同等

 有害事象も、死亡が両群で1例ずつと同等だった。

 以上から、Buttery氏は「LVRSとBVLRを直接比較した初の多施設RCTの結果、治療1年後のiBODEスコアと各指標のスコア改善は同等だった。また、安全性にも差はなかった」と結論。その上で「肺気腫におけるLVRSのより低侵襲なBVLRに対する優位性は示されず、仮説は棄却された。しかし、今回の結果はいずれの治療法を選択するか意思決定する際、アウトカムとリスクに関するエビデンスを提供できる。今後はより多くの症例を対象に、患者がいずれの治療により高い反応を示すかを同定し、費用効果についても検討する必要がある」と付言した。

(編集部)