韓国・University of Ulsan College of MedicineのDuk-Woo Park氏らは、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を施行した患者1,706例を対象に、施行後のフォローアップ方法が臨床転帰に及ぼす影響を多施設ランダム化比較試験POST-PCIで検討。その結果、PCI施行後2年時点の全死亡、心筋梗塞、不安定狭心症による入院の複合リスクに関し、標準管理のみを行った群と心機能検査を追加した群で有意差はなかったとN Engl J Med(2022; 387: 905-915)に発表した。
2年後の複合リスク:心機能検査5.5% vs. 標準管理6.0%
同試験では、2017年11月~19年9月に韓国の11施設でPCIを施行し、フォローアップ中の虚血性心血管イベントまたは血栓形成イベントのリスクを高める解剖・臨床的特性を有する患者1,706例(平均年齢64.7歳、男性79.5%)を登録。標準管理に加えPCI施行後12カ月時点で負荷核医学検査、運動負荷心電図または負荷心エコーによる心機能検査を行う群(849例)と標準管理のみを行う群(857例)に1:1でランダムに割り付けた。
高リスク特性の割合は、左冠動脈主幹部病変が21.0%、分岐部病変が43.5%、多枝病変が69.8%、病変長30mm超またはステント長32mm超の長いびまん性病変が70.1%、糖尿病が38.7%、急性冠症候群が19.4%だった。
解析の結果、主要評価項目とした複合イベント(PCI施行後2年時点の全死亡、心筋梗塞、不安定狭心症による入院)発生率は、標準管理群の6.0%に対し心機能検査群では5.5%と、両群に有意差はなかった(群間差-0.53%ポイント、95%CI -2.76~1.70%ポイント、ハザード比0.90、95%CI 0.61~1.35、P=0.62)。
主要評価項目を構成する各要素の発生率に関しても、全死亡(心機能検査群2.8% vs. 標準管理群3.3%、群間差-0.57%ポイント、95%CI -2.21~1.07%ポイント)、心筋梗塞(同0.5% vs. 1.2%、-0.73%ポイント、-1.61~0.16%ポイント)、不安定狭心症による入院(同2.3% vs. 1.7、0.63%ポイント、-0.72~1.98%ポイント)の全てで有意差がなかった。
Less is more:侵襲的検査が増えてもリスク低下せず
一方、副次評価項目としたPCI施行後2年時点の侵襲的冠動脈造影の施行率(心機能検査群12.3% vs. 標準管理群9.3%、群間差2.99%ポイント、95%CI -0.01~5.99%ポイント)、血行再建術の再施行率(同8.1% vs. 5.8%、2.23%ポイント、-0.22~4.68%ポイント)は、心機能検査群で高かった。
Park氏らは「心機能検査を追加したフォローアップでは、侵襲的冠動脈造影の施行率および血行再建術の再施行率の高さが心血管イベント発生率または死亡率の有意な低下につながらなかった」と指摘。「侵襲性の高い管理・検査を減らした方が転帰良好であるという"Less is more"のベネフィットが示された」としている。
(太田敦子)