新潟大学大学院産科婦人科学分野の工藤梨沙氏、主任教授の榎本隆之氏、准教授の関根正幸氏らの研究グループは、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンによる子宮頸部前がん病変(細胞診異常)の予防効果を検討。ワクチン接種者では子宮頸部前がん病変〔高度扁平上皮内病変(HSIL以上)〕が有意に減少しており、特に初交前に接種した場合はHPV16/18型関連の細胞診異常を認めなかったとの結果をCancer Sci (2022; 113: 3211-3220)に報告した。初交年齢や性交経験人数など性的活動性で調整し、HPVワクチンの子宮頸部前がん病変予防効果を明らかにしたのは日本初の成果だ。

自治体接種記録に基づく正確な接種歴と性的活動性調査を用いて検討

 研究グループはこれまでに、HPVワクチン接種を受けた20〜22歳の女性におけるHPV16/18型感染に対する高い予防効果とHPV31/45/52型に対する有意な予防効果を報告している(J Infect Dis 2019; 219: 382-390)。しかし、子宮頸部前がん病変に対する予防効果について、日本人女性を対象に性的活動性を加味して解析した報告はなかった。

 今回の解析対象は、2014〜20年に新潟市内で子宮頸がん検診を受けた20〜26歳の4,553人。HPVワクチン接種歴と性的活動性(初交年齢、性交経験人数)を調査した。そして自治体接種記録でHPVワクチン接種歴が確認された3,167例(69.6%)をワクチン接種群、接種歴が確認できなかった1,386例(30.4%)をワクチン非接種群として子宮頸部細胞診異常率を検討した。

初交前接種者におけるHPV16/18型細胞診異常例は皆無

 その結果、軽度扁平上皮内病変(ASC-US)以上の細胞診異常率は、ワクチン非接種群の7.3%に対しワクチン接種群では4.7%(P<0.001)、HSIL以上の細胞診異常率はワクチン非接種群の0.9%に対しワクチン接種群では0.3%(P=0.013)といずれもワクチン接種群で有意に低く、HSIL以上の細胞診異常に対するワクチン有効率は64%であることが示された。また、初交前接種者に限定した検討ではワクチン有効率は78.3%に高まり、ワクチンの主な標的となるHPV16/18型の細胞診異常例は認められなかった()。

図. HPVワクチンの子宮頸部前がん病変に対する有効性

20220913100306.png

(新潟大学プレスリリースより)

 以上から研究グループは「日本人女性において、子宮頸がんの前がん病変である細胞診異常に対するHPVワクチンの予防効果が確認されたのは接種を控える女性に対する朗報。ワクチンを初交前に接種することが極めて重要である」と結論。それに加えてHPVワクチン接種済みの女性に対しては「ワクチンには子宮頸部細胞診異常の予防効果があるものの、子宮頸がん検診は必ず受ける必要があることを伝えていく必要がある」としている。

編集部