新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大により、小児の重症例や死亡例の増加が懸念される。厚生労働省と国立感染症研究所は、関係学会(日本小児科学会、日本集中治療医学会、日本救急医学会)と共同で、20歳未満の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染後の死亡例(小児死亡例)について積極的疫学調査を実施。小児死亡例の半数は基礎疾患がなく、7割が発症から1週間以内に死亡していたことなどが明らかになった。

小児死亡41例中、内因性死亡29例の背景因子を報告

 主な調査項目は年齢、性、基礎疾患、ワクチン接種歴、発症日、死亡日、症状/所見、死亡に至る経緯などで、2022年1月1日〜8月31日に41例の小児死亡が報告された。死亡は2022年1月から継続的に発生し、2022年第28週(7月11〜17日)以降に増加していた。実地調査が行われたのは41例中32例で、うち外傷などを除いた明らかな内因性死亡は29例だった。

 内因性死亡例29例の年齢は0歳が8例(28%)、1〜4歳が6例(21%)、5〜11歳が12例(41%)、12〜19歳が3例(10%)で、男児が16例(55%)だった。ワクチン接種対象者(5歳以上)は15例(52%)で、未接種者は13例(87%)だった。2回接種者は2例(13%、いずれも12歳以上)で、発症は最終接種日から3カ月以上経過していた。

基礎疾患を有していたのは14例(48%)だった。内訳は中枢神経疾患が7例(50%)、先天性心疾患染色体異常が各2例(14%)などで、重複も認められた。

基礎疾患がある症例の死因は循環器系、呼吸器系、中枢神経系の異常など

 基礎疾患を有していた14例の年齢は5歳未満が8例(57%、うち0歳4例)、5歳以上が6例(43%)で、男児が9例(64%)だった。

 医療機関到着時の症状/所見は発熱が11例(79%)、呼吸困難が7例(50%)、悪心・嘔吐が6例(43%)、咳嗽5例(36%)、経口摂取不良が4例(29%)、痙攣と意識障害が各3例(21%)だった。

 死亡に至る主な経緯は、循環器系の異常と呼吸器系の異常が各3例(21%)、中枢神経系の異常が2例(14%)、その他が3例(21%)で、3例(21%)は原因不明だった。

 発症日は14例中12例で得られ、発症から死亡までの日数の中央値は4日(範囲1〜74日)だった。内訳は0〜2日が3例(25%)、3〜6日が7例(58%)、7日以上が2例(17%)だった。

基礎疾患がない症例では呼吸器系の異常は認められず

 基礎疾患を有していなかった15例の年齢は5歳未満が6例(40%、うち0歳4例)、5歳以上が9例(60%)で男児が7例(47%)だった。

 医療機関到着時の症状/所見は発熱が12例(80%)、意識障害が10例(67%)、悪心・嘔吐が9例(60%)、痙攣と経口摂取不良が各5例(33%)、咳嗽が4例(27%)で呼吸困難例は認められなかった。

 死亡に至る主な経緯は、中枢神経系の異常が5例(33%)、循環器系の異常が4例(27%)、その他が3例(20%)で、3例(20%)は原因不明だった。呼吸器系の異常は認められなかった。

 発症日は15例中14例で得られ、発症から死亡までの日数の中央値は4.5日(範囲0〜15日)だった。内訳は0〜2日が5例(36%)、3〜6日が4例(29%)、7日以上が5例(36%)だった。なお、29例の特性はの通りである。

表. 小児死亡例の特性

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(「国立感染症研究所、新型コロナウイルス感染後の20歳未満の死亡例に関する積極的疫学調査(第一報):2022年8月31日現在」より)

小児では呼吸器症状以外の症状にも留意を

 調査の結果、基礎疾患を有さないCOVID-19小児患者においても死亡例が報告されており、基礎疾患がなくても注意深く経過を観察すべきであることが示唆された。また、ワクチン未接種者の割合が多かった。

 症状については、日本小児科学会による国内小児におけるCOVID-19レジストリ調査※1と比べ、呼吸器症状以外の症状のうち、悪心・嘔吐、意識障害、経口摂取不良、痙攣の頻度が高かった。COVID-19の重症度分類※2は、主に呼吸器症状に基づいているが、小児では、痙攣、意識障害などの神経症状、嘔吐、経口摂取不良などの全身症状の出現にも留意すべきであることが示された。

 なお、発症から死亡までの日数は1週間未満が73%を占めており、特に発症後1週間の症状の経過観察が重要であると考えられた。

(編集部)