妻を殺害したとして、製薬大手「第一三共」社員吉田佳右容疑者(40)が逮捕された事件で使われたメタノール。無色の液体で、塗料や工業用溶剤として主に使われるが有害性は高く、専門家は「体内に入れば少ない量でも失明の可能性がある」と指摘する。
 含有率100%のメタノールの原体は毒劇物取締法による規制の対象で、国や都道府県などに登録しなければ製造や販売ができない。購入者に対し、本人確認や用途を聞くなど取り扱いには厳しい条件が課されている。毒性が強く飲用は厳禁で、専門家は「摂取量が多いと不整脈や意識障害、心停止に至ることもある」と話す。
 捜査関係者によると、体内に摂取した場合、30分~6時間で頭痛や中枢神経の異常、6~30時間程度でけいれんや呼吸困難などの症状が出るとされる。個人差はあるものの、口から摂取した場合の致死量は30~240ミリリットルという。
 海外では近年もメタノールを混ぜた密造酒が出回り、2014年にはロシアで酒として売られていたメタノール度数93%の液体を飲んだ16人が死亡した。兵庫県では16年3月、女がメタノール入りの酒を夫に飲ませ、多臓器不全で死亡させた事件が起きた。 (C)時事通信社