東京都大田区で1月に起きたメタノール中毒死事件で、製薬大手「第一三共」の社員吉田佳右容疑者(40)が、研究開発員として日常的にメタノールを使用する立場だったことが18日、関係者への取材で分かった。
 業務上、倉庫から持ち出せる権限もあったといい、警視庁捜査1課は、事件に使った可能性もあるとみて入手先特定を急いでいる。同課は同日、殺人容疑で吉田容疑者を送検した。
 関係者によると、吉田容疑者は第一三共で研究開発部門に所属し、新薬の研究などに取り組んでいた。研究では、実験などに欠かせない溶媒としてメタノールを日常的に使用している。
 同社が研究施設の倉庫で管理しているメタノールは、劇物指定されている含有率がほぼ100%の原体。小さなガラス瓶などの容器で保管されており、施設の各階に設置された倉庫から実験室に運び、目的に応じ希釈するなどして使うという。
 第一三共は取材に対し、メタノールを倉庫から持ち出す場合は記録簿への記入を義務付け、使った本数や量も記録に残すなど管理を徹底していると説明。実験室での使用状況も記録簿で管理しているという。無断で研究施設の外に持ち出せる状況にあったかについては、「社内調査を進めている」としている。
 吉田容疑者は1月14~16日ごろ、自宅で妻容子さん(40)にメタノールを摂取させたとして逮捕された。捜査関係者によると、逮捕直後は容疑を否認していたが、その後、黙秘に転じたという。 (C)時事通信社