国土交通省が20日発表した2022年度の基準地価は、全用途平均が3年ぶりに上昇に転じた。新型コロナウイルス禍からの経済活動正常化が進み、住宅や店舗需要の回復基調が全国的に広がった。一方、熊本県菊陽町の工業地は、半導体受託製造最大手TSMC(台湾積体電路製造)の工場新設効果で上昇率が31.6%と全国1位となった。
住宅地は低金利や住宅取得支援策も下支えし、全国平均は0.1%上昇と31年ぶりのプラス。テレワークの浸透で「住環境ヘの関心が高まった」(東急不動産)とされ、都市部の郊外などに需要が拡大している。
地方では平均6.6%上昇した4市(札幌、仙台、広島、福岡)から周辺への波及が目立つ。特にプロ野球の新球場開業で開発が進む北海道の北広島市など札幌隣接市が全国の上昇率上位を独占した。
商業地も個人消費の持ち直しや出社日数増加で0.5%上昇と3年ぶりプラスとなった。ただ、都内の出社率はまだ6割程度で、「コロナ前に戻る可能性は低い」(三井住友トラスト基礎研究所)との見方もある。
都心では丸の内など地価が弱含む地点もあり、オフィス過剰供給への懸念も出ている。不動産各社は「『出社したくなるオフィス』が求められている」(三菱地所)として、働き方の変化への対応や差別化を急ぐ。
円安進行もあり、海外勢の不動産投資が活発化することも想定される。ただ、ホテルや商業施設は入国制限撤廃によるインバウンド(訪日客)の復活待ちの状態で、本格回復には時間を要しそうだ。
熊本・菊陽町周辺では半導体関連や物流企業の投資・進出も加速。従業員向け住宅や店舗需要も増え、地元金融機関が「県内で10年に4兆円超」と見込む経済効果が顕在化してきた。 (C)時事通信社
脱コロナ進展で回復基調に=半導体新工場、球場効果も―基準地価

(2022/09/20 17:09)