これまで、心房細動のリスクは女性に比べて男性で高いと考えられてきた。米・Vanderbilt University Medical CenterのHasan K. Siddiqi氏らは、心房細動リスクの性差について検討するため、心血管疾患(CVD)の既往がない男女2万5,000例超を対象に多変量解析を実施。身長を調整後の心房細動リスクは、男性と比べ女性で約40%高かったとする結果をJAMA Cardiol2022年8月31日オンライン版)に発表した。

VITAL Rhythm Studyの参加者を解析

 心房細動の有病率は男性に比べ女性で低いと報告されているが、脳卒中心不全などが続発するリスクは女性の方が高いことが示されている。

 Siddiqi氏らは、高用量ビタミンDとω-3脂肪酸摂取による心房細動の発症予防効果について検討したランダム化比較試験(RCT)VITAL Rhythm Studyの参加者を対象に、心房細動の発症リスクや危険因子における性差について解析した。

 解析対象は、同試験のベースライン時に心房細動、CVD、がんの既往がなかった50歳以上の男性1万2,362例と55歳以上の女性1万2,757例の計2万5,119例(平均年齢±標準偏差67.0±7.1歳)。中央値で5.3年の追跡期間中における心房細動の発生回数は男性で495回(発生率4.0%)、女性で405回(同3.2%)だった。

女性のリスク低下は男女間の体格差に起因か

 年齢、RCTで割り付けられたレジメンを調整して解析した結果、心房細動の発症リスクは男性と比べ女性で32%有意に低かった〔ハザード比(HR)0.68、95%CI 0.59~0.77、P<0.001〕。この男女差は人種および民族、喫煙、飲酒、高血圧糖尿病、甲状腺疾患、運動、BMIを調整後も維持された(同0.73、0.63~0.85、P<0.001)。

 しかし、多変量モデルにおいてBMIの代わりに①身長、②身長と体重、③体表面積(BSA)―の各因子を調整して解析したところ、心房細動の発症リスクはいずれも男性と比べ女性で有意に高かった(①HR 1.39、95%CI 1.14~1.70、P=0.001、②同1.49、1.21~1.82、P<0.001、③同1.25、1.06~1.49、P=0.009)。

 以上から、Siddiqi氏らは「ベースライン時にCVDがなかった男女の大規模コホート研究において、心房細動の発症リスクは女性の方が低いことが示された。しかし身長を調整後の解析では、女性であることは心房細動リスクの上昇に関連していた。従来の研究では女性であることは心房細動に保護的に働くことが示されていたが、われわれのデータでは男女間の体格差がその主な要因であることが示唆され、女性における心房細動予防の重要性が明確に示された」と結論している。

(岬りり子)