塩野義製薬は本日(9月28日)、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の経口抗ウイルス薬として開発中のensitrevirについて、第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験のPhase 3 partで主要評価項目を達成したと発表した。軽症〜中等症のCOVID-19患者において、オミクロン株に特徴的な5症状が消失するまでの時間をプラセボに比べ有意に短縮したという。ensitrevirについては、7月20日に開かれた厚生労働省の審議会で「有効性を示すデータが不足している」として継続審議となったが、その後日本感染症学会と日本化学療法学会が緊急使用承認を求める提言を発出し、医療関係者から利益相反などを指摘する声が上がっていた。(関連記事:「国産コロナ治療薬の緊急承認に関する提言 」「オミ株出現で激変、新薬候補には疑義 」)
24時間有意に短縮
今回発表された第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験のPhase 3 partは、COVID-19重症化危険因子およびワクチン接種の有無にかかわらず軽症〜中等症の患者1,821例を登録。ensitrevir(低用量/高用量の2種類)を1日1回5日間経口投与した群における臨床症状の改善効果をプラセボ群と比較した。主要評価項目は、発症から72時間未満に投与された患者における5症状(鼻水または鼻詰まり、喉の痛み、咳の呼吸器症状、熱っぽさまたは発熱、倦怠感)の消失までの時間とした。
検討の結果、症状消失までの時間(中央値)はプラセボ群の192.2時間に比べ、ensitrevir低用量群では167.9時間と約24時間有意に短縮した(P=0.04)。
副次評価項目とした投与4日目(3回投与後)におけるベースラインからのウイルスRNA変化量は、プラセボ群と比べensitrevir群で1.4 log10 copies/mL以上有意に大きく(P<0.0001)、これまで実施された臨床試験と同様に抗ウイルス効果が示された。なお、低用量群、高用量群ともに重篤な副作用や死亡は報告されなかった。
今回の結果について、塩野義製薬は昨日付けで厚労省と医薬品医療機器総合機構(PMDA)に報告し、既に両者との協議を開始しているという。今後、厚労省における審議の再開時期と承認の行方が注目される。
(平山茂樹)