米国小児科学会(AAP)感染症委員会は、小児における今シーズン(2022/23年)のインフルエンザワクチンに関するステートメントをPediatrics2022年9月6日オンライン版)に発表した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策により、これまではインフルエンザの流行が最小限に抑えられているが、今シーズンは集団の免疫力低下が懸念される。通常、インフルエンザは初秋(10月)~晩春(5月)に流行し、幾つかのピークがあるため、生後6カ月以上の全ての小児に10月末までの接種を推奨している。

コロナワクチンと同時接種OK、妊娠中の女性も問題なし

 季節性インフルエンザの流行時、小児は一貫して最も高いインフルエンザ発症率を示している。特に5歳未満児や併存疾患を持つ小児は感染しやすく、致命的な合併症を引き起こすリスクも高い。昨シーズンのワクチン接種率は低調であり、今年4月9日までにワクチン接種を受けた生後6カ月~17歳の小児はわずか53.3%にとどまっていた。

 ステートメントの推奨事項は以下の通り。

1. 2022/23年シーズンにおいて、年齢6カ月以上の全ての小児・青年にインフルエンザワクチン接種を推奨する

2. 弱毒生ワクチンや不活性化ワクチンを含む、年齢および健康状態に応じた認可済みの全てのインフルエンザワクチン接種を推奨するものであり、特定製品の推奨ではない。免疫不全を含む一部の人には、不活性化ワクチンまたは組み換え蛋白ワクチン(対象年齢の場合)が適している

3. 小児に推奨されるインフルエンザワクチンの接種回数は2022/23年シーズンでも変わらず、初回接種年齢と接種歴によって異なる。初めて接種を受ける6カ月から8歳の小児、今年の7月1日以前に1回しか接種を受けていない小児、接種歴が不明な小児は、今シーズンに最低でも4週間間隔を空けて2回接種すべきである。それ以外の小児は1回接種すべきである

4. 小児の年齢に適した推奨用量を投与すべきである。誤って青年や成人の用量を投与された場合も有効と見なす。また、36カ月以上の小児に誤って推奨用量より低い用量(例:0.25mL)が投与された場合は、できるだけ早く追加投与(0.25mL)し、推奨用量(0.5mL)にする必要がある。0.5mL用量の不活性化ワクチンは2回に分けて0.25mLずつ投与してはいけない

5. 1シーズンで2回の接種が必要な場合、同じ製品である必要はない。年齢や健康状態に適していれば、不活性化ワクチンと弱毒生ワクチンの組み合わせでも構わない

6. ワクチンは特に2回接種が必要な小児に、入手可能になり次第早めの接種が必要である。今年10月末までの接種完了が理想である。これは、免疫低下を懸念して成人(特に65歳以上)で7月や8月に接種すべきでないという予防接種諮問委員会(ACIP)による推奨とは異なる。インフルエンザワクチンの接種はシーズンを通して継続すべきである

7. インフルエンザ不活性化ワクチン(または対象年齢であれば組み換え蛋白インフルエンザワクチン)は他の不活性化ワクチンまたは生ワクチン接種と同時期でも、前後でもいつでも接種できる

 弱毒インフルエンザ生ワクチンは、他の生ワクチンまたは不活性化ワクチンと同時期に接種できる。もし同時期に接種していない場合は、弱毒インフルエンザ生ワクチンや、その他の非経口生ワクチン投与から4週間間隔を空けなければならない(4日間の猶予期間は認められる)

8. 現在のガイダンスでは、インフルエンザワクチン新型コロナウイルス(SARS-2-CoV)ワクチンと同時期でも前後でもいつでも投与できる

9. 妊娠中の女性は、自身と胎児保護のためにいつでも不活性化インフルエンザワクチン (または対象年齢であれば組み換え蛋白インフルエンザワクチン)を接種できる。妊娠中にインフルエンザワクチンを接種していない場合は、退院までに受けることを推奨する。インフルエンザワクチンは授乳中でも母子にとって安全である

10. 全ての小児に対し、ワクチン接種を促すべきである。特に高リスク集団とその接触者は禁忌を除き推奨する。健康格差の影響を受ける地域においてインフルエンザワクチン接種を促進するには、予防接種に関連する計画を策定する際に、その地域のメンバーを含めることが重要である

11. 低年齢児には医療機関での接種が最適だが、学校や薬局など医療機関以外の場所での予防接種を推進し、予防接種に対する格差を減らすことは接種率を向上させうる。医療機関以外で接種した場合は医療機関と連絡を取り、予防接種計画に記録することが強く推奨される

12. AAPは、インフルエンザを予防しインフルエンザウイルス感染に関連する治療を減らすための重要な要素として、医療従事者へのインフルエンザワクチン接種を支援する

コロナ重症小児も症状が改善次第、インフルエンザワクチン接種を

 インフルエンザワクチンに対し、アナフィラキシーなどの重篤なアレルギー反応の病歴がある場合は一般的に禁忌となるが、アレルギー専門医に診療し、反応を引き起こすワクチン成分の特定が必要だとしている。

 また、新型コロナウイルスウイルス(SARS-CoV-2)に感染し、重度の急性疾患を患った場合は、症状が改善次第インフルエンザワクチンを接種するように推奨している。

(編集部)