米・University of Minnesota School of Public HealthのSo-Yun Yi氏らは、18~30歳の健康な若年成人約3,000人を30年間追跡し、クルミなどのナッツの摂取と心血管疾患(CVD)の危険因子との関連を検討。その結果、クルミ以外のナッツ摂取群やクルミ・ナッツ非摂取群と比べて、クルミ摂取群は食事の質と身体活動度が高く、CVDリスクプロファイルが良好だったとNutr Metab Cardiovasc Dis(2022年7月30日オンライン版)に発表した。なお、検討におけるクルミ摂取群のクルミ摂取量は約21g/日と一握り程度であるという。
食事の質スコアが高いクルミ摂取者、20年間で4倍増
解析対象は、若年成人期のCVD発症リスクについて検討したCoronary Artery Risk Development in Young Adults(CARDIA)研究に登録された18~30歳の健康な成人3,023例。ベースライン(1985~86年)での内訳は、クルミを摂取しているクルミ摂取群が94例、クルミ以外のナッツを摂取しているナッツ摂取群が2,143例、クルミ・ナッツ非摂取群が786例だった。
20年間の追跡期間中に、クルミ摂取群は352例(約4倍に増加)、他のナッツ摂取群は2,494例(16.8%増加)、ナッツ非摂取群は177例(78.5%減少)に変化していた。1日当たりの平均摂取量は、クルミ摂取群におけるクルミが約21g/日、クルミ以外のナッツが約31.2g/日で、ナッツ摂取群ではクルミ以外のナッツが約45.6g/日だった。
ナッツ摂取群およびクルミ・ナッツ非摂取群と比べて、クルミ摂取群は食事の質を示すHealthy Eating Index 2015(HEI-2015)スコアが有意に高かった(P<0.001)。
栄養素および食品別では、総エネルギー摂取量、多価不飽和脂肪酸のエネルギー摂取量、αおよびγリノレン酸、食物繊維、ビタミンB6およびE、マグネシウム、カリウムの摂取量がクルミ摂取群で有意に多く、飽和脂肪酸のエネルギー摂取量が有意に少なかった(P≦0.04)。また、全粒穀物、果物、野菜、豆類、魚の摂取量が有意に多く、精製穀物、赤肉および加工肉の摂取量が有意に少なかった(P≦0.05)。
身体活動度は高く、BMIや血圧、肥満度は低く
追跡30年(2015~16年)時点の年齢、性などの交絡因子を調整後の一般化線形回帰モデルによるCVD危険因子の解析で、ナッツ摂取群およびクルミ・ナッツ非摂取群と比べて、クルミ摂取群では身体活動度スコアが有意に高かった(それぞれP=0.001、P=0.02)。
一方、ナッツ摂取群と比べてBMI(P=0.03)、体重増加量(P=0.02)、ウエスト周囲長(P=0.01)、ウエスト周囲長の変化量(P=0.01)、収縮期血圧(P=0.04)、拡張期血圧(P=0.002)、トリグリセライド値(P=0.04)、腹部肥満の該当率(P=0.004)が有意に低く、クルミ・ナッツ非摂取群と比べて空腹時血糖値(P=0.02)の有意な低下が認められた。
LDLコレステロール値はナッツ摂取群に比べてクルミ・ナッツ非摂取群で有意に低かったが(P=0.04)、総コレステロール値、インスリン値、高血圧および高コレステロール血症の有病率は3群間で有意差がなかった。
以上を踏まえ、Yi氏らは「ナッツ摂取群やクルミ・ナッツ非摂取群と比べて、クルミ摂取群は食事の質と身体活動度が高く、CVDリスクプロファイルが良好だった。これらの結果は、米国食事ガイドラインDietary Guidelines for Americans(2020~25年版)の健康的な食事にクルミをはじめとしたナッツを取り入れることを推奨する内容を支持するものだ」と結論している。
(太田敦子)