一般的な解熱鎮痛薬として知られるアセトアミノフェンの慢性的な使用が、2型糖尿病リスクとなる可能性が示された。中国・Southern Medical UniversityのChun Zhou氏らは、UK Biobankのデータを用いて非糖尿病の成人を対象に、非ステロイド抗炎症薬(NSAID)イブプロフェンまたはアセトアミノフェンの定期的な使用と2型糖尿病発症リスクとの関連を検討する前向きコホート研究を実施。その結果、アセトアミノフェン非使用群に比べ、定期使用群では2型糖尿病の発症リスクが有意に高かったとDiabetes Metab(2022年9月16日オンライン版)に発表した。
37万人超を12年間追跡
UK Biobankは、2006〜10年に英国の40〜69歳の約50万人から遺伝学的データと健康データを収集した大規模な前向きコホート研究。登録者のうち、ベースライン時にイブプロフェンまたはアセトアミノフェンの使用に関する情報があり、非糖尿病(空腹時血糖値126mg/dL超またはHbA1c6.5%未満)の37万2,843人を対象として、糖尿病発症の有無を追跡調査した。
対象の平均年齢は56.3±8.1歳、20万4,286人(54.8%)が女性で、イブプロフェン定期使用群(イブプロフェン群)は5万6,557人(15.2%)、アセトアミノフェン定期使用群(アセトアミノフェン群)は8万2,883人(22.2%)だった。
中央値で12.1年の追跡期間中に1万1,527人(3.1%)が2型糖尿病を発症した。
発症リスク1.25倍、イブプロフェンでは関連なし
Cox比例ハザードモデルを用いた解析により、アセトアミノフェン非使用群に対し、アセトアミノフェン群では2型糖尿病発症リスクが有意に高かった〔共変量調整後ハザード比(HR)1.25、95%CI 1.19〜1.31〕。しかし、イブプロフェン定期使用と2型糖尿病発症との間に有意な関連はなかった(同1.05、0.99〜1.12)。
さらに、層別解析を行いアセトアミノフェンの定期使用と2型糖尿病発症との関連性への影響を調べると、ベースライン時に60歳未満、心血管疾患がない、降圧薬非使用の人で、より強い正の関連が認められた(順に交互作用ののP=0.008、P=0.01、P=0.016)。一方、これらはイブプロフェンの定期使用と2型糖尿病発症との関連に有意な変化は与えなかった。
加えて、2型糖尿病の遺伝的リスクはイブプロフェンまたはアセトアミノフェンの使用と2型糖尿病発症との関連性に有意な影響を及ぼさなかった(順に交互作用のP=0.113、P=0.335)。
アセトアミノフェンの詳細な投与量や投与期間などに基づく検討が必要
これまでNSAIDまたはアセトアミノフェンの定期使用と2型糖尿病発症リスクとの関連性を調べた前向き研究はほとんど行われていない。今回、Zhou氏らは2型糖尿病の遺伝的リスクとは無関係に、イブプロフェンではなく、アセトアミノフェンの定期使用が英国の中年成人における2型糖尿病発症リスクを高めることと関連していることを示した。
同氏らは「私たちの研究結果は、臨床においてアセトアミノフェンまたはイブプロフェンを選択する際により多くの考慮が必要であることを示している」と結論。その一方で、「イブプロフェンやアセトアミノフェンの投与量や期間といった詳細な情報が得られなかったことや、対象が40〜69歳の英国在住者に限られており、結果を一般集団に適応できないなどの限界がある」と指摘し、「さらなる検討により今回の知見を評価、確認する必要がある」と述べている。
(宇佐美陽子)