【パリ時事】フランス東部リヨンに2024年12月、国内初となるLGBTなど性的少数者向けの高齢者施設がオープンする見通しとなった。リヨン市議会が9月下旬、全会一致で計画の法案を可決。同市長は声明で「共に助け合う社会の選択だ」と歓迎した。
 施設名は「多様性の家」。発案した民間団体は「LGBTなどの高齢者が抱える問題に配慮し、家族からの支援のない高齢者がより良く年を重ねられる施設」の実現を目標に掲げる。団体によれば、仏国内には約100万人の性的少数者がおり、65%程度が単身で生活している。子供がいるのは約10%に限られるという。
 団体代表は今月1日付の仏紙ルモンドに対し、「LGBTなどの高齢者が温かい目で見守られながら年を重ねるスペースの確保は、公共政策で死角になっていた問題だ」と指摘。「1980年代にエイズウイルス(HIV)に感染した人々が退職を迎えている。社会から疎外されてきた彼らには特別な配慮が必要だ」と訴えた。
 団体によると、施設には医療機能はないが職員が常駐する。地域住民とも交流できる公共スペースを設置する予定だ。
 入居を検討しているというフランソワさん(61)はルモンドに対し、「自分が同性愛者だと隠していれば問題ないが、いじめに遭うような場所には行きたくない。静かな場所を望んでいる」と話した。 (C)時事通信社