米国・Cincinnati Children's Hospital Medical CenterのPatrick S.Walsh氏らは、インフルエンザで入院した小児において、早期のオセルタミビル投与が転帰を改善するかを明らかにするため、5万5,799例を対象とした多施設共同後ろ向きコホート研究を実施。その結果、対照群と比べて早期オセルタミビル群では入院期間が短縮し、7日以内の再入院率や集中治療室(ICU)への移送率、体外式膜型人工肺(ECMO)の使用率、死亡率のいずれも低かったとJAMA Pediatr(2022年9月19日オンライン版)に報告した。
36施設の約14年分の小児データを調査
米国小児科学会(AAP)および米国感染症学会(IDSA)は、インフルエンザで入院した全ての小児に対し、症状緩和のためにオセルタミビルを投与することを推奨しているが、患者の転帰を改善するか否かは議論がある。
そこでWalsh氏らは今回、インフルエンザで入院した小児を対象に、早期のオセルタミビルの投与が転帰を改善するかを明らかにするため、多施設共同後ろ向きコホート研究を実施した。
対象は、小児医療情報システムデータベースに参加している36の小児三次医療施設において、2007年10月1日〜20年3月31日にインフルエンザで入院した18歳未満の小児5万5,799例(年齢中央値3.61歳、男児56%)。オセルタミビルを早期(入院当日または翌日)に投与された3万3,207例(59.5%、早期オセルタミビル群)と早期に投与されなかった2万2,592例(対照群)に分け、2021年1月〜22年3月にデータを解析した。
主要評価項目は入院期間とした。副次評価項目は、7日以内の再入院、後期(入院2日目以降)のICUへの移送、院内死亡またはECMO使用の複合とした。適応による交絡を排除するため、傾向スコアリングに基づく逆確率重み付け(IPTW)法を用い、混合効果モデルにより、両群の転帰を比較した。高リスク(若年、複合的な慢性疾患、早期のICU移送、喘息の既往)のサブグループ内でも転帰を比較した。
発症早期からのオセルタミビルの使用を支持する良好な結果
解析の結果、全体の入院期間中央値は3日で、7日以内に再入院した小児は2,241例(4.0%)、院内死亡またはECMO使用は581例(1.1%)、ICU移送は1,486例(3.7%)であった。
IPTWモデルにおいて、早期オセルタミビル群では入院期間が有意に短かった〔中央値3日 vs. 4日、オッズ比(OR)0.52、95%CI 0.52〜0.53〕。
また、早期オセルタミビル群では7日以内の再入院(3.5% vs. 4.8%、OR 0.72、95%CI 0.66〜0.77)、ICU移送(2.4% vs. 5.5%、同0.41、0.37〜0.46)、死亡またはECMO使用の複合(0.9% vs. 1.4%、同0.63、0.54〜0.73)の低下と有意な関連が認められた。
全ての高リスク群においてもほぼ同様の結果で、入院期間、7日以内の再入院率、ICUへの移送率のいずれも早期オセルタミビル群で良好な結果だった。院内死亡率またはECMOの使用率は、2~5歳(0.8%、95%CI 0.6~1.0%、vs 1.1%、95%CI 0.8~1.3%、P=0.08)および喘息を有する小児(0.1%、同0.0~0.2% vs. 0.2%、同0.1~0.4%、P=0.24)を除く全てのサブグループで、早期オセルタミビル群で有意に低かった。
以上から、インフルエンザで入院中の小児に対するオセルタミビルの早期使用は、入院期間の有意な短縮に加え、7日以内の再入院率、ICU移送率、院内死亡率またはECMO使用率の有意な低下と関連していた。
今回の結果についてWalsh氏らは、「AAPとIDSAが推奨している、入院中の小児に対するインフルエンザ発症早期からのオセルタミビルの使用を支持するものである」と結論している。
(今手麻衣)