過度な肥満は慢性腎臓病(CKD)の原因となるが、若年期の体型とCKDの関連は明らかでない。デンマーク・Copenhagen University HospitalのJulie Aarestrup氏らは、小児期のBMIと成人期のCKD発症および末期腎不全(ESKD)との関連を検討。結果をPLoS Med(2022; 19: e1004098)に報告した。
1930〜87年出生の男女30万例超を解析
CKDの主な危険因子は糖尿病と高血圧とされるが、成人期の過度の肥満もCKD発症リスクになることが明らかになってきた、とAarestrup氏ら。加えて、小児期の過体重や肥満が世界中で問題視され、重度肥満児における早期の腎機能異常や低下が明らかである一方、CKD発症との関連についてはあまり研究されていない、と指摘している。
そこで、デンマークの出生登録レジストリCopenhagen School Health Records Registerのデータを解析し、小児期のBMIと成人期のCKD発症およびESKDとの関連を検討するコホート研究を実施した。1930〜87年に出生し、30歳時点でデンマークに在住していた30万96例(男性15万1,506例)を解析対象とし、CKD、ESKD、遺伝性腎疾患、腎がん、1型糖尿病の診断、CKDと2型糖尿病の同時診断、死亡、移住、追跡不能の発生または2017年12月31日まで追跡した。6〜15歳までの身長および体重データを基にBMIを算出、8、10、12歳時のBMIから軌跡を求めた。
BMIによる五分位の内訳は、男性が第1五分位群(平均未満)3万4,945例、第2五分位群(平均)6万4,548例、第3五分位群(平均超)3万7,721例、第4五分位群(過体重)1万1,854例、第5五分位群(肥満)2,438例で、女性は順に3万1,027例、5万9,224例、3万9,823例、1万5,057例、3,459例だった。
小児期BMIが高いほど成人期CKDリスク上昇
平均30.8人・年の追跡期間中に、男性5,968例、女性3,803例でCKDを発症、男性977例、女性543例でESKDの進行が認められた。CKD発症時の平均年齢は男性67歳、女性66歳、ESKDへの進行は男女ともに62歳だった。
男女を統合したCKD発症率およびESKD進行率をBMIの五分位別に検討した結果、いずれも第3〜第5五分位群で有意に高く、第1および第2五分位群で最も低かった。
CKD発症に2型糖尿病発症を加えて男女別に発症率比(IRR)を求めた。その結果、BMIの第2五分位群に対し、男性では第3五分位群(IRR 1.07、95%CI 1.00〜1.14)、第4五分位群(同1.25、1.14〜1.38)、第5五分位群(同1.39、1.13〜1.72)、女性ではそれぞれIRR 1.18(95%CI 1.08〜1.28)、同1.24(1.11〜1.38)、同1.54(1.28〜1.86)と、小児期のBMIが高い群でリスクが有意に上昇した。同じくESKD進行についても2型糖尿病発症を加味して求めたところ、BMI高値との関連は見られたものの有意差は示されなかった。
以上から、Aarestrup氏らは「小児期のBMIが平均の集団に比べ、平均を超える集団では成人期のCKD発症およびESKD進行の割合が高いことが示唆された。2型糖尿病発症を加えて解析すると、特にCKD発症において両者の関連が有意に強まった」と結論。病院に登録されたCKD診断記録を基にした解析であると限界などに言及しつつ、「CKDの発症要因および修正可能な危険因子の1つとして、小児期の適正体重の達成と維持が重要である」と付言している。
(松浦庸夫)