米・University of PittsburghのWendy C. King氏らは、Roux-en-Y胃バイパス術(RYGB)またはスリーブ状胃切除術(SG)による減量手術を受けた者では、術後5年以内に婚姻状況が変化(結婚または別居・離婚)する割合が一般人口の2倍以上に上ることが分かったと、Ann Surg Open(2022; 3: e182)に発表した。

1,441例の前向きコホート研究で確認

 RYGBおよびSGは重度の肥満に対する効果的な治療法であり、体重、血糖コントロールおよびその他の身体的健康面の持続的な改善につながる。

 King氏らは、2006~09年に米国の6施設でRYGBまたはSGを受けた1,441例(年齢中央値47歳、女性79%、BMI中央値46.5)を対象に、減量手術が婚姻状況に及ぼす影響を検討する前向き研究を実施した。

 術前の婚姻状況の内訳は全体の57%(827例)が既婚で同居しており、5%が未婚の同棲、4%が別居、15%が離婚、2%が死別、17%が婚姻・同居歴なしだった。

 中央値で4.9年(四分位範囲3.4~5.0年)追跡した結果、独身の614例の術後5年間の累積結婚率は18%で、米国の一般成人人口の6.9%と比べ、2倍以上だった。5年累積結婚率は術前に同棲していた人が39%で最も高く、次いで別居している人の24%(再婚)だった。

 一方、既婚者827例の術後5年間の累積離婚率は8%で、米国の一般成人人口における3.5%の2倍以上だった。なお、離婚者以外に5%が別居に至っていた。

身体状況の改善が婚姻行動の変化を促す可能性

 Cox回帰分析の結果、減量手術後の結婚または再婚に関連する有意な因子として、術前のパートナーとの同居〔ハザード比(HR)5.25、95%CI 2.89~9.52、P<0.001〕、パートナーとの別居(同3.03、1.46~6.29、P<0.001)、若年(10歳低下ごと:同1.69、1.34~2.13、P<0.001)、大卒者(同2.36、1.19~4.71、P=0.03)、低BMI(BMI 10低下ごと:同1.54、1.11~2.12、P=0.009)、うつ症状が少ない(ベック抑うつ評価尺度10点低下ごと:同1.47、1.01~2.16、P=0.047)が抽出された。

 一方、術後5年間の離婚または別居に関連する因子としては、女性(HR 2.08、同1.09~3.96、P=0.03)、若年(10歳低下ごと:同1.84、1.46~2.34、P<0.001)、世帯収入年間2万5,000ドル未満(同2.48、1.08~5.71、P=0.007)、週に数回の性的欲求(同2.12、1.05~4.28、P=0.02)などが抽出された。

 King氏は「減量手術により身体機能が改善されたことが、婚姻状況を変える行動につながった可能性がある」と考察している。

                                      (編集部)