新型コロナウイルスの水際対策が11日から大幅に緩和されるとともに、新たな需要喚起策「全国旅行支援」が始まる。長くコロナ禍に苦しんできた観光地では、円安も追い風に、インバウンド(訪日客)への期待が高まっている。
 スキーやスノーボードを楽しむため、多くの外国人観光客が訪れていた北海道・ニセコ。コロナ禍前の2019年は観光客が400万人を超え、宿泊客の8割が外国人だったが、20~21年はほぼ半分に落ち込んだ。今冬の宿泊予約件数は以前の水準に戻る勢いで、外国人の予約も多いという。
 倶知安観光協会の吉田聡会長は「2年間辛酸をなめてきたので、期待値はとても高い」と声を弾ませる。一方、コロナ禍で人材流出が進み、「もてなす側の人材不足が痛い」と懸念も示す。
 全国でスキー場とホテルを経営する東急リゾーツ&ステイ(東京都)も、ニセコ地区の宿泊予約は回復傾向にある。佐藤文雄・ニセコ地区統括総支配人は「外国人観光客が戻るのは大きい。このまま伸びていけば」と話す。
 書き入れ時の紅葉シーズンを控えた京都でも期待が高まる。「あぶらとり紙」で有名なよーじやグループ(京都市)は、一時は全店休業に陥ったが、先月から売り上げは回復基調にある。出野沙優美・広報室長は「コロナ禍前と比べると厳しいが、紅葉シーズンは客が一番増える時期。より多くの人が来てくれるとうれしい」と話す。
 観光名所の嵐山で土産物店を営む細川政裕さん(60)は「円安も追い風となりインバウンドが戻ってくる環境ができた」と期待を示しつつ、「外国人はマスクをしないのがスタンダード(標準)。日本人は感染を懸念して近づくのを嫌がるかもしれない」と気をもむ。「商店街の各店で換気や消毒を徹底しており、嵐山のほとんどが野外観光地なので、コロナに感染するリスクは低い」と安全性を強調した。 (C)時事通信社