米・Case Western Reserve University School of MedicineのEllen K. Kendall氏らは、小児呼吸器感染症患者57万例超の電子医療記録を解析し、感染後の1型糖尿病の発症リスクを検討。その結果、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)以外の呼吸器感染症の発症者と比べて、COVID-19発症者では感染後1~6カ月時点で1型糖尿病と新規に診断されるリスクが2倍前後に上ったとJAMA Netw Open(2022; 5: e2233014)に発表した。
他の感染症と比べ6カ月後の診断数が約1.7倍
対象は、米国50州と14カ国の74施設から9,000万例超の匿名化された電子医療記録を収集しているTriNetX Analytics Platformに登録された18歳以下の小児患者。2020年3月~21年12月に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染しCOVID-19を発症したCOVID-19群31万4,917例と、同期間中にSARS-CoV-2には感染せずCOVID-19以外の呼吸器感染症を発症した非COVID-19群77万6,577例の計109万1,494例を抽出した。
傾向スコアマッチングを用い、1:1で年齢、性などの患者背景と糖尿病の家族歴をマッチングさせた各群28万5,628例(計57万1,256例)を解析に組み入れた。
解析の結果、感染後6カ月までに1型糖尿病と新規に診断された患者は、非COVID-19群の72例(0.025%)に対しCOVID-19群では約1.7倍の123例(0.043%)に上った。
感染後1、3、6カ月の時点で1型糖尿病と新規に診断されるリスクは非COVID-19群に比べてCOVID-19群で高く、各時点のハザード比は1.96(95%CI 1.26~3.06)、2.10(同1.48~3.00)、1.83(同1.36~2.44)だった。
感染時の年齢別の解析でも、2型糖尿病を発症する可能性が低い9歳以下と10~18歳の両年齢層で同様のリスク上昇が認められた。
以上の結果から、Kendall氏らは「以前から呼吸器感染症は1型糖尿病の発症リスクに関連することが指摘されていたが、今回の研究でCOVID-19がさらなるリスク上昇をもたらすことが示された。COVID-19発症後の1型糖尿病リスク上昇は、小児SARS-CoV-2感染の予防と治療に関するリスクとベネフィットの考察において考慮すべき重要なポイントになる」と結論している。
(太田敦子)