長崎大学内科学第一講座の古賀智裕氏らは、コルヒチン抵抗性または不耐性である日本人の家族性地中海熱(FMF)患者23例を対象に、インターロイキン(IL)-6阻害薬トシリズマブ(TCZ)の有効性と安全性を検討する第Ⅲ相二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験(RCT)を実施。その結果、TCZ群はプラセボ群と比べ発熱発作の発生回数が少なく、発作の再発率も有意に低かったと、Clin Exp Rheumatol(2022; 40: 1535-1542)に報告した。
FMF患者の10〜20%はコルヒチン抵抗性または不耐性
FMFは遺伝性の自己炎症性疾患で、関節炎、皮疹などを伴う発熱発作を繰り返すのが特徴である。FMFの第一選択薬はコルヒチンだが、患者の10〜20%はコルヒチンの効果が見られないか、副作用により使用を中止している。
コルヒチン抵抗性FMFやFMF患者の二次性アミロイドーシスに対して、IL-6阻害薬の有効性が示された臨床報告は幾つかあるが、FMF患者を対象としたIL-6阻害薬のRCTは行われていない。そこで古賀氏らは今回、TCZの有効性と安全性を検討する第Ⅲ相RCTを実施した。
対象は、国内9施設で2018年3月1日〜2019年12月31日に登録したコルヒチン抵抗性または不耐性のFMF患者23例(年齢12〜75歳)。11例をTCZ群(TCZ 162mg、平均年齢37.5歳)、12例をプラセボ群(同45.9歳)に1:1でランダムに割り付け、TCZまたはプラセボをそれぞれ週1回、24週間皮下投与した。二重盲検期間中に4回以上の発熱発作があった患者には、レスキュー治療としてTCZを皮下投与した。
コルヒチン抵抗性は最大用量(1日1.5〜2.0mg)まで増量しても3カ月に1回以上発熱発作が起こる場合、コルヒチン不耐症は消化器症状や発熱などの副作用が3カ月に1回以上発現し、コルヒチンの継続投与や最大用量への増量ができない場合と定義した。
二重盲検期間中に経口ステロイドまたはコルヒチンの投与量を変更した例、プレドニゾロンが1日5mgを超えて投与された例、ステロイドを静脈内投与または筋肉内投与された例、生物学的製剤、非ステロイド性抗炎症薬、アセトアミノフェンを投与された例は除外した。
主要評価項目は、24週の治療期間における発熱発作の発生回数とした。副次評価項目は、発作時の随伴症状の頻度、血清C反応性蛋白(CRP)および血清アミロイドA蛋白(SAA)、有害事象とした。
非盲検延長試験では、先行試験を完了した全例をTCZ群に移行し、TCZの長期(48週間)の安全性と有効性を評価した。
長期使用でも有効性と安全性を確認
負の二項回帰分析の結果、1週間当たりの発熱発作の推定回数は、プラセボ群の0.113回(95%CI 0.053〜0.242回)に対し、TCZ群では0.078回(同0.027〜0.222回)と少なかったが有意差はなかった〔率比0.691、95%CI0.189〜2.531、P=0.58〕。
レスキュー治療を行った患者の割合は、プラセボ群で33.3%、TCZ群で9.1%だった。
発作の再発は、TCZ群で有意に低かった(ハザード比0.457、95%CI 0.240〜0.869)。
TCZを48週間投与した患者の大半で、発熱発作や随伴症状が減少した。また血清CRPは陰性化し、SAAもベースラインと比べ有意に低下した。
全期間を通して、有害事象の発現頻度および重症度に両群で差はなかった。
以上から、古賀氏らは「コルヒチン抵抗性または不耐性のFMF患者に対するTCZ投与は、発熱発作および随伴症状の軽減に有効で、長期に投与しても安定した有効性を示すことが示唆された」と結論。「TCZは標準治療では十分な効果が得られないFMF患者にとって、有用な治療選択肢となる可能性がある」と付言している。
(今手麻衣)