早期産に伴う低出生体重が、児の発育や生命予後などに弊害をもたらすことは知られている。しかし、正期産における出生体重と児の発達との関連についてはデータが乏しいとして、英・Conventry UniversityのAbiodun Adanikin氏らは、両者の関連を検討し、結果をPLoS Med2022; 19: e1004108)に報告した。

妊娠37〜43週の出生児68万例超対象

 妊娠37週未満の早期産の低出生体重児における運動機能や社会性、言語などの発達障害との関連については多くの研究が行われている。また、出産時期にかかわらず、2,500g未満の低出生体重児については発達の遅れが指摘されている。しかし、「妊娠37週以降の出生児の体重と発達との関連については明らかでない」とAdanikin氏ら。

 そこで同氏らは、スコットランドの国民保健サービスが有する5つの健康データベースを用い、2003年1月1日〜15年12月31日に産科病院35施設で出生した単生児のうち、妊娠37週0日〜43週6日に出生した68万6,284例を対象に、出生体重と児の発達との関連を検討した。先天異常が認められた児は除外した。

 出生体重の内訳は、2.5kg未満が1万4,571例、2.5〜4.0kgが57万6,019例、4.0kg超が9万5,694例。児の発達は、微細運動および粗大運動機能、コミュニケーション能力、社交性の4項目について2歳時および3.5歳時に各評価スケールを用いて判定した。両時点で各評価が実施できた29万5,200例のうち、4万1,877例が1項目以上で発達の問題が示され、項目別では微細運動機能が7,033例、粗大運動機能が5,957例、コミュニケーション能力が3万6,550例、社交性が1万865例だった。

出生体重が低いほど発達懸念のリスク上昇

 出生体重パーセンタイルと幼少期の発達の懸念との関連について、多変量三次スプライン回帰モデルを用いて解析した。その結果、妊娠37週以降の出生児では、25〜74パーセンタイル(対照)群に比べ、第25位未満で発達の懸念リスクが高かった。

 対照群に対する児の発達懸念のリスク比(RR)を求めた。その結果、母親の年齢やBMIなどを調整したRRは、3パーセンタイル未満群が1.37(95%CI 1.24〜1.50)、3〜9パーセンタイル群が1.18(同1.12〜1.25)、10〜24パーセンタイル群が1.07(同1.03〜1.12)と、体重が低い児ほど有意なリスク上昇が示された(順にP<0.001、P<0.001、P=0.001)。一方、75〜89パーセンタイル群(RR 1.01、95%CI 0.97〜1.05)、90〜96パーセンタイル群(同0.99、0.94〜1.05)、97パーセンタイル以上群(同1.04、0.97〜1.12)の過体重児ではリスクの有意な上昇または減少は認められなかった。

 以上から、Adanikin氏らは「妊娠37〜43週の出生児では、低体重に当たる25パーセンタイル未満の出生児で早期発達懸念リスクとの関連が認められた」と結論。「詳細な調査や保護者へのカウンセリング、幼少期の手厚い支援などを行うことで、低体重児の発達懸念リスクの低下につながる可能性がある」と付言している。

松浦庸夫