虫垂炎治療における抗菌薬投与と虫垂切除術の有効性を比較検討した非盲検ランダム化比較試験CODAでは、虫垂切除術に対する抗菌薬投与の非劣性が示されている(関連記事「虫垂炎への抗菌薬療法は切除術に非劣性」「NEJMに学ぶ急性単純性虫垂炎の治療」)。米・University of WashingtonのIrene Y. Zhang氏らは、同試験の二次解析として抗菌薬治療に対する患者の信頼度と転帰との関連を評価。信頼度が高い患者では虫垂切除術を受けるリスクが低かったことをJAMA Surgery2022年10月5日オンライン版)に報告した。

信頼度を3段階に分け転帰との関連を評価

「治療が成功する」という患者の信念は転帰に影響を及ぼす可能性があるが、外科治療での検討は乏しい。

 CODA試験では2016年5月~20年2月に米国25施設で虫垂炎患者1,552例を登録、776例を抗菌薬治療群に割り付けた。このうち、425例(平均年齢±標準偏差38.5±13.6歳、男性65%)が治療群の割り付けを知る前に、抗菌薬治療の信頼度に関する項目を含む質問票に回答した。

 信頼度は0~10点で評価し、回答により低信頼度群(0~5点、不成功/不確実)、中信頼度群(6~9点)、高信頼度群(10点)に分類した。患者の割合はそれぞれ22%(415例中92例)、51%(同212例)、27%(同111例)だった。

手術割合は高信頼度群で半減

 30日以内に虫垂切除術を受けた患者の割合は、低信頼度群の28%に対して中信頼度群では19%、高信頼度群では14%と、高信頼度群で半減した。

 低信頼度群と比べて中信頼度群では30日以内の虫垂切除術リスクが約6%ポイント〔補正リスク差(aRD)−5.68、95%CI −16.57〜5.20)〕、高信頼度群では約13%ポイントいずれも減少した〔同−13.49、−24.57〜−2.40〕。

 ランダム化48時間後における低信頼度群に対する切除術のハザード比(HR)は虫信頼群で0.49(95%CI 0.24〜0.97)、高信頼度群で0.29(同0.11〜0.77)といずれも低く、48時間〜30日ではそれぞれ0.88(同0.39〜1.99)、0.71(同0.27〜1.86)と低い傾向にあった。

 30日後まで虫垂炎の徴候・症状が持続した割合は、低信頼度群の47%に対して中信頼度群では29%、高信頼度群では30%だった。

 低信頼度群と比べて中信頼度群では徴候・症状の持続リスクが低く(aRD −15.72、95%CI −29.71〜−1.72)、高信頼度群でも同様だった(同−15.14、−30.56〜0.28)。

 Zhang氏らは「虫垂炎治療の意思決定を行う際には、治療成功の可能性に関する患者の信念を理解することが重要」と結論。「患者の信念が転帰につながる機序の解明や患者の信念を変える方策、患者と介護者や医師との間での治療に対する信念の相互作用などについて、さらなる検討が必要」と付言した。

(菅野 守)