高尿酸血症は心血管系の有害転帰と関連することが示唆されているが、尿酸低下療法が心血管系のリスクを軽減するかについて、一貫した結論は得られていない。英・University of DundeeのIsla S. Mackenzie氏らは、痛風の既往がない60歳以上の虚血性心疾患患者6,000例超を対象に、高尿酸血症治療薬のアロプリノールが心血管転帰を改善するか否かを検討するため多施設ランダム化比較試験(RCT)ALL-HEARTを実施。その結果、虚血性心疾患患者に対するアロプリノール600mgの連日投与は、標準治療と比べ心血管転帰を改善しなかったと、Lancet2022; 400: 1195~1205)に発表した。

mITT集団の5,721例を対象に有効性を検討

 ALL-HEART試験は、英国で実施されたPROBE法によるRCT。2014年2月7日~17年10月2日に424のプライマリケア施設で登録された痛風の既往がない60歳以上の虚血性心疾患患者6,134例を、アロプリノール群と標準治療群に1対1でランダムに割り付けた。中等度以上の腎障害〔推算糸球体濾過量(eGFR)が60mL/分/1.73m2未満〕を有する患者は除外した。アロプリノール群にはアロプリノール1日100mgを2週間投与後、300mgを2週間、その後忍容性がある場合は1日600mg(300mgを1日2回)を連日投与した。2016年4月4日以降は、中等度の腎障害を有する患者を研究に組み入れるようプロトコルが変更され、eGFRが30〜59mL/分/1.73m2の者にはアロプリノール1日100mgを2週間、その後忍容性がある場合は1日300mgを連日投与した。

 主要評価項目は、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心血管死の複合心血管イベントとした。

 有効性は、5,721例(アロプリノール群2,853例、標準治療群2,868例、平均年齢±標準偏差(SD)72.0±6.8歳、男性4,321例)を対象に、modified intention-to-treat(mITT)解析で、安全性はITT解析で評価した。平均追跡期間は4.8年だった。

全死亡も両群で有意差なし

 主要評価項目である複合心血管イベントの発生率は、標準治療群の11.3%(325例、100患者・年当たり2.37イベント)に対しアロプリノール群では11.0%(314例、100患者・年当たり2.47イベント)と両群で有意差はなかった〔ハザード比(HR)1.04、95%CI 0.89〜1.21、P=0.65〕。

 全死亡についても、標準治療群で10.6%(303例)、アロプリノール群で10.1%(288例)と両群で有意差はなかった(HR 1.02、95%CI 0.87〜1.20、P=0.77)。安全性については、標準治療群に比べアロプリノール群で重篤な有害事象が増加するといった報告はなかった。

 Mackenzie氏らは「虚血性心疾患患者へのアロプリノール600mg連日投与は、標準治療と比較して心血管転帰を改善しなかった。したがって、虚血性心疾患の再発予防において、アロプリノールは推奨されない」と結論している。

(宇佐美陽子)