メタボリックシンドローム(メタボ)に対しては、クルクミンやコエンザイム(Co)Q10のサプリメント(サプリ)摂取による代謝改善効果が報告されている。イラン・Baqiyatallah University of Medical SciencesのAbbas Ali Sangouni氏らは、両サプリが血圧、ウエスト周囲長、中性脂肪(TG)、コレステロール、空腹時血糖(FPG)などのメタボ構成要素に及ぼす影響を検討するランダム化比較試験(RCT)を実施。結果をNutr J(2022; 21: 62)に報告した。
メタボ88例を4群にランダム化し12週間追跡
心血管疾患(CVD)および2型糖尿病の危険因子である脂質異常症や高血圧、高血糖、インスリン抵抗性、肥満などのメタボに対して、スパイスの一種であるクルクミンや抗酸化作用を有するCoQ10の摂取による改善効果が期待できるとされるが、データは十分でないとSangouni氏ら。そこで同氏らは、メタボと判定された18歳以上の88例を対象に、2☓2ファクトリアルデザインによるプラセボ対照RCTを実施した。
メタボの判定は高ウエスト周囲長(男性94m以上、女性80cm以上)に加え、①TG高値(150mg/dL以上)、②HDLコレステロール(HDL-C)低値(男性40mg/dL未満、女性50mg/dL未満)、③収縮期血圧(SBP)高値(130mmHg以上)または拡張期血圧(DBP)高値(85mmHg以上)、④FPG高値(100mg/dL以上)―のうち2項目以上に該当と定義。対象にはそれぞれの治療薬使用例も含めたが、がん、CVD、脳卒中、腎疾患などの既往例は除外した。
88例を①クルクミンサプリ(200mg)+プラセボ(CP)群、②CoQ10サプリ(60mg)+プラセボ(QP)群、③クルクミンサプリ+CoQ10サプリ(CQ)群、④プラセボ+プラセボ(対照)群ーに22例ずつランダムに割り付けた。主な背景は平均年齢が約38〜40歳、男性が約60〜70%。4群とも4週ごとにサプリを受け取り、昼食前に摂取した。果物と野菜、穀類や魚介類を多く取り、赤肉および加工肉は控えめにするなどの食事指導を受けた。12週間追跡し、メタボ判定に用いた各項目の変化を評価した。
クルクミンサプリは脂質異常症を改善
12週後に各項目を評価した。その結果、ベースラインと比べCP群ではTG値(平均−58.0mg/dL)およびHDL-C値(平均10.0mg/dL)、CQ群ではTG値(平均−16.0mg/dL)で有意な改善が認められ(順にP<0.001、P<0.001、P=0.01)、TG値およびHDL-C値においては有意な群間差が確認された(ともにP<0.001)。
また、QP群でもTG値(平均−9.8mg/dL)の改善傾向が見られたものの、有意差は示されなかった(P=0.08)。SBP値、DBP値、ウエスト周囲長、FPGなどに関しては、各群におけるベースラインとの比較および4群での比較のいずれも有意差は認められなかった。
以上から、Sangouni氏らは「われわれが知る限りクルクミンおよびCoQ10のサプリを用いてメタボの改善効果を検討した初のRCTにおいて、クルクミンサプリの単独使用またはCoQ10サプリとの併用による脂質異常症の改善効果が示唆された」と結論。「しかし、血圧や血糖値などメタボを構成する他の要素に対する有用性は確認されなかった」と付言している。
(松浦庸夫)