日本感染症学会は本日(10月20日)、今後懸念される新型コロナウイルス感染症(COVID-19)およびインフルエンザの同時流行を想定した外来診療フローチャートを発表し、そのポイントと注意点を示した。フローチャートでは、同時流行に伴い医療が逼迫する蓋然性が高い現状を踏まえ、両疾患における重症化リスクの有無別に診療手順を提示している(関連記事「感染症学会、『今季のCOVID-19とインフルエンザ同時流行時の注意点』を発表」)。
重症化リスク低ければ自己検査、自宅療養へ誘導
今回のフローチャート(表)は、2020年に日本感染症学会が作成したチャートに2022年10月13日開催の厚生労働省の新型コロナ・インフル同時流行対策タスクフォースで提示された内容を反映させたものである。なお、同学会は同チャートに症状として挙げた発熱、咽頭痛、咳嗽、倦怠感、頭痛はCOVID-19およびインフルエンザ以外の感染症でも見られるため、検査キットで確定診断できない場合は両疾患以外の疾患との鑑別を慎重に行うことが大切であると補足している。
表. COVID-19およびインフルエンザが同時流行した場合の外来診療フローチャート
(日本感染症学会公式サイトより)
上記フローチャートに関連するポイントと注意点として同学会は、①COVID-19とインフルエンザの同時流行に備える体制の必要性、②ワクチン接種、③重症化リスクに応じた対応、④新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)、インフルエンザウイルスに対する同時簡易抗原検査キット(コンボキット)の利用、⑤健康フォローアップセンターへの登録と相談、⑥電話およびオンライン診療の活用と留意点-を列挙している。
具体的には、①が生じる根拠として、南半球のオーストラリアや東アジアの疫学情報から、今冬COVID-19とインフルエンザの同時流行が生じる可能性が高いことに言及。インフルエンザの流行が前倒しされることや、COVID-19の再流行(第八波)を想定するべきなどとした。また②については、SARS-CoV-2およびインフルエンザウイルスワクチンの速やかな接種を促し、両ワクチンの同時接種も可能であることを周知するよう訴えた。
③に関しては、両疾患に対しては対面診療が原則であるとしながらも、外来診療の逼迫が想定される場合には、医療機関への受診は重症化リスクが高い患者(高齢者、基礎疾患を有する者、妊婦、小学生以下の小児)を優先。重症化リスクが低い患者は、検査キットによる自己検査を推奨し自宅療養へ誘導するのがよいという。
オンライン診療ではインフルエンザ正診率が5割以下となる可能性も考慮を
さらに④に際しては、コンボキットによる判定が困難である場合に備え、遺伝子検査も実施できるよう準備し、患者に対してはCOVID-19の再流行前にSARS-CoV-2検査キットを購入しておくよう促すのが望ましいと説明。⑤では、自己検査でSARS-CoV-2の陽性判定を受けた患者は登録、症状が悪化したもしくは不安を感じる者は連絡し、医療機関の受診について相談するよう指導することが求められると指摘している。
加えて、⑥においては対面診療に比べ電話・オンライン診療で得られる情報は限定的である点に留意し、判断に迷うまたは重症化を否定できない場合は受診を求めるよう強調。対面診察の際の症状からインフルエンザ様疾患と臨床診断した症例が対象の研究で、PCR検査や血清診断などで実際にインフルエンザと確認できたのは60%程度であったとの報告を紹介した(J Am Coll Health 2011; 59: 246-251)。この知見から、同学会ではオンライン診療におけるインフルエンザの正診率は50%を下回ることが考えられるとし、政府がインフルエンザへのオンライン診療導入という方針を変更しないのであれば、こうした正診率の低さについて医師、国民に徹底して周知しなければならいと主張している。
(陶山慎晃)