レム睡眠行動障害(RBD)は、睡眠障害の1つでレム睡眠時に寝言を言う、暴れるなどの症状が現れる。高齢者に多く、パーキンソン病(PD)やレビー小体型認知症などの神経変性疾患との関連が指摘されている。これらの神経変性疾患では高率にうつ病を合併することが指摘されているが、RBDとうつ病の関連は明らかでない。そこで滋賀医科大学精神医学講座の角幸頼氏、増田史氏らは、RBDにおける抑うつ状態および関連症状についてシステマチックレビューとメタ解析を実施。うつ病合併率は約30%と高いことをSleep Med Rev2022; 65: 101684)に発表した(関連記事「抗うつ薬がレム睡眠行動障害のリスクに」)。

罹病期間が短い患者で抑うつ症状が重度

 通常、レム睡眠時には骨格筋が弛緩するため夢と連動して体を動かすことは難しいとされるが、RBDでは暴力的な夢や恐怖感を伴う夢に反応し、叫ぶ、隣で寝ている者を殴る、蹴るなどの攻撃的、暴力的な行動が現れ、相手を傷つけたりベッドから転落したりすることがある。しかし、こうした行動時に睡眠から覚醒するケースは少ない。

 RBDは、症候性RBDと原因不明の孤発性/特発性レム睡眠行動障害(iRBD)に分類される。症候性RBDの原因としてはPDやレビー小体型認知症などが指摘されており、iRBDでは軽度認知障害を含む神経変性疾患の発症リスクが高いことが知られている(PLoS One 2014; 9: e89741)。これらの神経変性疾患は高率にうつ病を合併するが、RBDとの関連は明らかでない。そこで角氏らは今回、RBDにおける抑うつ状態および関連症状の有病率について検討するシステマチックレビューとメタ解析を実施した。

 PubMedおよびScopusを検索し、基準を満たした研究31件・iRBD患者3,576例(男性80.3%、平均年齢66.6±8.6歳)を抽出。ランダム効果モデルを用いて精神症状の有病率、95%予測区間(PI)、I2値を算出した。精神症状の重症度とiRBD診断時の年齢およびiRBD罹病期間との関係を評価するためにメタ回帰分析を行った。

 その結果、うつ病の有病率は28.8%(95%CI 23.1~35.2%、95%PI 8.1~65.1%、I2=83.9%)だった(図1)。また、うつ病スケールスコアとiRBD罹病期間の間に有意な負の相関が認められ、iRBD罹病期間が短い患者で抑うつ症状がより重度であることが示された(P=0.012、β=-0.36、R2analog=0.33、図2)。

図1. iRBD患者におけるうつ病合併率に関するフォレストプロット

RBD_fig01.png

図2. iRBD罹病期間(横軸)と抑うつ症状重症度(縦軸)の関係

RBD_fig02.png

(図1、2とも滋賀医科大学プレスリリース)

 以上を踏まえ、角氏らは「エビデンスレベルが高いシステマチックレビューおよびメタ解析において、iRBD患者のうつ病有病率は約30%と高いことが示された」と結論。「特筆すべきは、RBDの罹病期間が短い時点で抑うつ状態が顕著であることだ。その背景には、RBD症状による苦痛や将来の神経変性疾患への進展に関する不安や懸念が関係していると考えられる。今後、RBD患者に対する心理的サポートがより重要になるだろう」と付言している。

(小野寺尊允)