社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)の年金部会は25日、2025年の年金制度改革に向けた議論を始めた。少子高齢化により、満額で月約6万5000円の基礎年金は給付水準低下が見込まれ、高齢者の暮らしへの影響が懸念される。その対策の在り方が焦点で、基礎年金の財源となる国民年金保険料の納付期間延長や、会社員や公務員が加入する厚生年金からの財源投入などが話し合われる見通し。
 厚労省は24年末までに改革案をまとめ、25年の通常国会での法改正を目指す。24年には、制度の健全性を確かめる5年に1度の「財政検証」を行い、議論に生かす。国民や企業の負担増が絡むだけに、曲折が予想される。
 現行制度は、現役世代が保険料を納め、高齢者に年金として仕送りする仕組み。若い世代が減り、受給者が増える中でも制度を持続させるため、支給額を徐々に抑制する「マクロ経済スライド」が導入されている。財政運営の安定性は高まったが、特に基礎年金を主な収入源とする高齢者の受給額が大きく目減りする欠点がある。
 そこで、国民年金保険料の納付期間に関し、現行の40年間から5年延長する案を議論。20歳から始まる納付は「60歳到達時まで」から「65歳到達時まで」に延びる。基礎年金の水準低下を抑えられる一方、自営業者や60歳までに退職した元会社員は保険料負担が増える。
 マクロ経済スライドによる基礎年金の給付抑制策の終了時期を当初想定の46年度より前倒しする案も話し合う。その分、財源が必要となるため、厚生年金や国庫から拠出する対応策も併せて協議。ただ、厚生年金保険料を拠出する労働者や企業などの理解を得るのは容易ではない。
 厚生年金をめぐっては、前回の制度改正で適用範囲の段階的な拡大が決まった。企業規模101人以上では一定の条件を満たす短時間労働者の加入が義務付けられており、24年10月に51人以上の企業も対象となる。次期改正ではこうした企業要件を撤廃した上で、対象業種を飲食店や宿泊業に拡大するかどうかも論点となる。
 部会では出席者から「新しい働き方への対応が必要」などと厚生年金のさらなる適用拡大を求める声が相次いだほか、「現行制度の男女差解消をさらに進めるべきだ」といった意見も出た。 (C)時事通信社