新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、パンデミック初頭の2020年冬季には致死率が高い難治性感染症として世界的な脅威となっていた。その後、変異株の登場などに伴い致死率の低下が指摘されていたが世界規模の解析は行われていなかった。そこで横浜市立大学病院化学療法センターセンター長の堀田信之氏らは、米・Johns Hopkins Universityが提供しているデータを解析し、COVID-19のパンデミック初頭の致死率8.5%に比べ、今年(2022年)8月には0.27%と30分の1以下に低下していたとJ Med Virol2022年10月17日オンライン版)に発表した。

日中米などで相対リスクが90%以上低下

 堀田氏らは、Johns Hopkins Universityから2020年1月26日~22年8月21日の世界における週間新規COVID-19発症数および死亡者数のデータ提供を受け、診断から死亡までのタイムラグを考慮した上で、致死率を算出。「1週間の死亡者数」を「2週間前の新規発症数」で除した値を致死率とし、対数変換した後に線形回帰モデルを適用した。全世界のデータに加えて人口上位11カ国のデータも分析した。

 同モデルで算出した全世界のCOVID-19による致死率は、2020年2月に8.5%であったのが今年8月には0.27%まで30分の1以下に低下した。また、この期間における推定相対リスク低下率は96.8%(95%CI 95.6~97.6%、P<0.001)で、人口上位11カ国のうち90%以上の相対リスク低下が見られたのは、中国(97.2%)、米国(90.4%)、ブラジル(93.6%)、メキシコ(96.7%)、日本(98.4%)の5カ国だった()。

図. 全世界および人口上位11カ国の致死率推移(縦軸が対数)

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(横浜市立大学プレスリリースより)

ワクチン接種、免疫獲得、弱毒化などの複合的効果か

 堀田氏らは「COVID-19の致死率は2年半の間に徐々に低下しており、インフルエンザの致死率(推定0.05~0.5%)に近づいている。致死率低下の原因として、ワクチン接種の広がりや治療の効果、感染による免疫獲得、ウイルス自体の弱毒化など複合的効果が考えられる」と結論。「大規模データによりCOVID-19の致死率低下を明らかにしたことは、今後の政策や行動指針の策定において重要なデータとなるといえるだろう」と付言している。

(小野寺尊允)